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2018.03.23

特許翻訳

昔の特許翻訳の驚くべき事実


私が最初にこの仕事を始めた頃は、世の中にパソコンはおろかワープロさえ存在していませんでした。特許翻訳者はどうやって仕事をしていたかというと、もちろん紙に手書きで訳文を綴っていました。

1. 手書きで特許を翻訳

今でも懐かしいあのB5版の茶色の原稿用紙に、カリカリと音を立てながら「本発明は、○○○に関する。」と訳文を書き込んでいくのです。特許翻訳者によってはお気に入りの鉛筆やシャーペンや万年筆を所有していました。私は、最初は化学系のセクションに配属されていたので、長い明細書となると1件で優に100ページを超えます。「アルキルメチルブチル。。。。」と間違えないように書き綴っていきます。途中で用語を変えようとしても、今みたいに「検索・置換」の機能などないので、特許翻訳者が1つ1つ書き直していかなくてはなりません。おかげで、今でも右手の中指には「ペンだこ」ができています。

2. 日本のタイプライター

japanese type writer

Photo by miya/ CC BY

翻訳者が書き上げた翻訳原稿は、その後どうなるかというと、当時はこの手書き原稿をタイピングしてくれる会社が世の中に存在していて、こういったタイピング会社に発注すると、手書き原稿を、薄いB5用紙にタイプしてくれました。これが特許庁に提出する仕上げ原稿となります。翻訳者の手書き原稿の文字が汚いと、当然、タイピストが判読できずに困ってしまうことになります。当時いらした私の大先輩の翻訳者は、書く文字1つ1つがやたらデカく、本人は「動」と書いたつもりでも、タイプ上がり原稿では「重力」になっていたりします。なので、翻訳者は仕上がり原稿の「読み合わせ作業」をしなくてはなりません。これがまた大変な作業でした。NMR(核磁気共鳴スペクトル)の数値などを読み合わせていると、意識が朦朧となります(笑)。

3. 郵送で翻訳を特許庁に提出

仕上がり原稿はその後、どうなるか?もちろん、電子出願なんてありませんからね、特許願などの書類一式と共に特許庁へ郵送していました。提出期限当日の夜遅く、中央郵便局へ行って当日の消印を押してもらえばギリギリ間に合います。

4. 特許翻訳の世界にワープロが登場

ワープロ

Photo by yuichirock/ CC BY

そうこうしているうちに、ついに世の中にワープロが登場しました。最初は所内に数台のワープロを導入し、翻訳者が順番にワープロを使って翻訳作業を始めるようになりました。機械の反応は遅く、いわゆる「キーボードの早打ち」をすると、速度に対応できずフリーズしてしまいました。あの時代は、まさに「手書き」から「キーボード」へと翻訳作業自体が大きく変わる変革期でありましたので、ワープロやパソコンに抵抗のある人達は、時代に取り残されてしまいました。今思えば笑ってしまうのですが、とにかく皆、必死でした。キーボードを両手人差し指のみで操作する人や、マウスの使い方が分からず空中にマウスを掲げてディスプレイに向かって動かす人などがいました。

ワープロで作業するようになって何が便利になったかというと、やはり「検索・置換」の機能でしょうか。途中で訳語を変更しても、一瞬で置換できますので、その都度最適の用語を選択できるようになりました。ただ、特許翻訳で使う日本語は、特殊なものが多いので、たいていワープロの辞書には含まれていないので、「係合」とか「螺合」とかを最初にせっせと単語登録しなくてはなりませんでした。でも、一度登録さえしてしまえば、特許翻訳作業はグンと楽になりました。

昔の特許翻訳についてはいかがだったでしょうか?ご質問・ご意見をお待ちしております。

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