Blog

  • TOP
  • Blog
  • ドイツの方言-ただの丸パンに言い方が8通りも?

2021.02.15

ドイツ語

ドイツの方言-ただの丸パンに言い方が8通りも?


ドイツ語は、世界中で約1億3千万人以上の話者がおり、そのうちおよそ1億人はドイツ語を母語としているといわれています。公用語としている国は6ヵ国(ドイツ、スイス、オーストリア、ルクセンブルク、ベルギー、リヒテンシュタイン)あり、スイスドイツ語などは、ドイツのドイツ語とは発音や語彙が著しく異なり、ドイツ人でも理解できない場合があるそうです。そして、ドイツ国内においても様々な方言があり、話者の出身地が離れすぎていると、意思疎通ができないと誇張されるほどに、方言が多い言語であると言われています。

黄色い地域が低地ドイツ語、水色は中部ドイツ語、深緑が高地ドイツ語地域

1. ドイツ語にはどのような方言がありますか?

ドイツ国内の方言は、北部地方の方言である「低地ドイツ語」Niederdeutsch)と中部地方の「中部ドイツ語」Mitteldeutsch)、南部地方の方言である「高地ドイツ語」(Hochdeutsch 注; Hochdeutsch標準ドイツ語という意もあるが、この場合のHochは南ドイツの標高が北ドイツに比べて高いことから、地理的な意味で用いられており、混同を防ぐため、Oberdeutschと表現されることもある)の三つに大別されており、さらにこの三つの地域は東西や南北で区分されています。低地ドイツ語は、西低地ドイツ語方言と東低地ドイツ方言、中部ドイツ語は、西中部ドイツ方言と東中部ドイツ方言、高地ドイツ語は、上部フランケン方言、バイエルン方言、アレマン方言…といった具合に細分化され、さらに地域を限定して区分されています。(さらに詳しい区分はこちら)

標準ドイツ語はハノーファーと定められていることからもわかるように、ドイツ北部地方は標準語に近く、方言のヴァリエーションは、アクセントの強弱、高低の強い南部地方において多くみられます。実際には、中部ドイツ語と高地ドイツ語は、しばしば同じカテゴリーに分類されますが、これは、第二次子音推移の影響を受けているか受けていないかで区別がされる場合の分類法です。言語学的には、ドイツの方言は様々な基準によって、地理的な境界線を引いて、グループ化されています。

2. ドイツ語の第二次子音推移とは?

低地ドイツ語と中部・高地ドイツ語の決定的な違いの基準である第二次子音推移とは、6世紀ごろに、スイス、オーストリアなどのドイツ語圏南部で起こった子音の変化のことです。それまで無声破裂音であった(p, t, k)が、破擦音(pfまたはf, tsまたはs, kまたはx )へと変化しました。

/p/ →  /pf/ /f/

/t/     /ts/ /s/

/k/     /kx/ /x/

ドイツ語に特徴的なこの/pf/という発音を持つ単語には、現代ドイツ語のPfeffer(胡椒), Pferd(馬), Pfirsich(桃)、/ts/の音を含む単語にはZeit, Zimmerなどにその変遷が見られます。低地ドイツ語では、/pf/の/p/の音を今日でもあまり強く発音しません。 この音韻変化はドイツ国内へも北上して影響を与え、9世紀ごろに中部地方で影響が留まった為、この影響がみられない地域の言語が低地ドイツ語と定義づけられています。この音韻変化からの影響を受けていない英語やオランダ語と、低地ドイツ語の類似性も確認されています。

3. ドイツやスイスの地域によってはどのような語彙の違いがありますか?

発音の違いだけでなく、方言の違いは語彙にも表れます。ここでは特徴的な例を挙げてみましょう。ドイツ人の主食であるパンですが、上の写真のような小さくて丸いパンは標準ドイツ語ではBrötchenといわれていますが、地方によって全く違う呼び名となります。

低地及び中部ドイツ語圏内ではBrötchen、オーストリア、スイス、イタリア・南チロル地方、ドイツ・バイエルン州ではSemme(r)l、南西ドイツのバーデン=ビュルテンブルク州では、Weckle、その北のザールランド州や、ラインラント=プファルツ州ではWeckと名付けられています。その他、スイスの東部及び南部の州ではBrötla、ベルリンではSchrippe、 ごく限られた地域ではありますがLaabla, Mütschliと呼ばれる地方もあるようです。このように、ただの丸パン1つとっても、同じドイツ語圏内でおよそ8通りの言い方が存在します。

このように日常生活に即したものであればあるほど、ドイツ語の語彙には、地方によってかなり多様性があるようです。ドイツ語の魅力を知り、それを翻訳通訳していく求道者であるトランスユーロの翻訳者、通訳者をぜひ一度お試し下さい。


参考HP

 

参考文献

 

  • ● 荻野蔵平/齋藤治之 歴史言語学とドイツ語史 同学社 2015
  • ● 河崎 靖 ドイツ方言学 ことばの日常に迫る 現代書館 2008

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA


お問い合わせ

Page Top