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2020.06.01

翻訳一般

新型コロナウイルスの翻訳業界への影響


以前のブログ記事で紹介しました通り、日本の特許翻訳業界には新型コロナウイルスによる大きな影響はまだありません。過去にあった東日本大震災のような災害でも、日本の特許翻訳業界は危機を凌いできました。そうは言いましても、今回の状況は今まで経験したことがないものですから、最終的な判断は待たなければいけないでしょう。

この記事では、コロナ禍がここまでの間、世界の言語産業全体にどのような影響を与えたのかを見ていきたいと思います。

上位言語サービスプロバイダーの半分で仕事が減っている

リサーチ会社CSAが、世界の上位言語サービスプロバイダー193社のCEOにアンケートを実施した結果(2020年3月31日現在)、CEOの51%が仕事量が減少していると答えました。7%が逆に増加しているとしていますが、これは新型コロナウイルス関連の翻訳によるものと思われ、一時的な仕事量の増加と思われます。

一定の翻訳需要が依然としてある一方で、今年行われる予定だった多くの会議や大規模なイベントの自粛により、特に通訳業を中心とした事業を行っている会社では、深刻な影響があります。

多くの言語サービスプロバイダーがリモートワークに業務切り替え

ウイルス拡散の防止手段として、多くの企業がリモートワークへ切り替えました。翻訳業界も例外ではありません。上に引用した調査によると、上位言語サービスプロバイダーの87%の社員がリモートワークをしているようです。翻訳者にとってはリモートワークに切り替えることは、その業務の性質上、比較的容易であったと思われます。翻訳業界では新型コロナウイルス以前からすでにリモートワークが普及していました。

通訳者にとっては、リモートワークへの切り替えはより困難と思われます。しかし、近年のコミュニケーションツールの技術を用いれば、リモートワークで通訳をすることも不可能ではないでしょう。

通訳は、これまでは現場に拘束された職業でありましたが、将来的にはリモート通訳への全般的な切り替えの時代を迎えることになるでしょう。

フリーランスの翻訳者への影響は?

CSAリサーチのフリーランス翻訳者に対するアンケートによると、フリーランス翻訳者の61%が仕事量の減少を実感しています  。ヘルスケアや医薬の翻訳需要については増加が報告されていますが、旅行や航空業界関連の翻訳は減退が認められます。仕事量が減少している分野の翻訳者は、現在厳しい状況にあると思われますが、他分野の翻訳に切り替えるなど、工夫が必要な時期のようです。

IUED翻訳通訳インスティテュートのディレクターである Gary Massey氏の記事(2020年5月7日)によると、フリーランスの翻訳者・通訳者のうち、経済的支援を受けられたのは、43%に過ぎないそうです。日本では、フリーランサーも新型コロナウイルス感染などの影響を受け、仕事ができなかった場合、また子供の世話をしなければならず仕事ができなかった場合、政府から支援を受けられます。しかし、仕事量減少については、支援は行われていません。

言語産業界への全体的な影響

観光産業、外食産業に比べ、言語産業への影響はこれまでのところそれほど大きくありません。リモートワークへの移行がほとんどの職域で容易に行われ、翻訳者にとっては既にコロナ禍以前からリモートワークがスタンダードでした。いくつかの企業が売上げ減退を報告していますが、今後おそらくデジタルコンテンツやオンラインコンテンツが重視されることを考えると、こういった分野の翻訳やオンライン会議の通訳の需要が将来高まると予想されます。通訳者はリモートワーク可能な新たな方法を模索しているところですが、通訳者のリモートワークのスタイルがニュースタンダードになれば、通訳者の移動時間や交通費を削減することにもつながるかもしれません。

皆さんの業界での影響にはどのようなものがありましたか?

 

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