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2019.08.05

翻訳一般

ドイツ語の翻訳会社が機械翻訳“DeepL”を使用してみた その感想と意見


翻訳に携わっている方でしたら、機械翻訳“DeepL”の名前を耳にしたことがあるのではないでしょうか。DeepLはグーグル翻訳と同様、ドイツ語、英語、スペイン語、イタリア語といった多言語の翻訳ができるフリーの機械翻訳サービスです。

私たち、ドイツ語の翻訳会社トランスユーロがDeepLを試した結果、ドイツ語-英語の翻訳に関して言えば、グーグル翻訳よりDeepLのほうが性能が良いという結論に至りました。そうは言っても、プロの翻訳者による翻訳に比べれば、まだまだ代替え可能な域には達していません。ここに、私たちが感じたDeepLの未熟な点を挙げてみます。

 DeepLは原文の間違いを判別できない

原文にスペルミスや文法ミスがあれば、プロの翻訳者なら当然見つけ出して正しく訂正することができるでしょう。DeepLは間違いを見つけ出せないので、その一文は意味をなさない文章として翻訳されてしまいます。

DeepLは空気が読めない

DeepLの最近のアップデートによると、短文または単文の翻訳だけではなく、ある程度量のあるテキスト全文を翻訳できるようになりました。これにより、用語の訳語の一貫性を保つことや、テキスト全文の内容を理解することに活用できるようになりました。しかし、それでもまだ課題は残ります。私たちは、私たちの最近のブログ記事からサンプルを選んでDeepLでの英→独翻訳を試みました。その結果、記事の中に「character」という単語があり、内容としては明らかに書き言葉としての表語文字の「character」を指すにも関わらず、DeepLはこれを物語の主人公の「charakter」として翻訳しました。私たちのブログ記事でしたら、おかしな訳文になったと笑って直せば済みますが、これが大切な法律文書や医薬文書であれば、些細な間違いも命取りになります。

DeepLにとってすべてのYouは「あなた」

Youという単語は、二人称の「あなた」を指す場合と、不特定の読み手を指す場合があるのは改めて言うことではありませんね。ところが、英語からドイツ語に翻訳するときは、前者の二人称のYouは、①「君」等と訳されるくだけた二人称Duと、②改まった「あなた」等と訳される敬称のSieの二方向に訳し分けなければいけません。後者の不特定多数を指すYouは、多くの場合、意味上の主語man(日本語には訳出されないことが多い)になります。DeepLは意味上の主語man とするのが適切な箇所にも敬称のSieを充てることがしばしばあります。また、はっきりした理由もなく、同じ文中で砕けたYouと敬称のYouが入れ替わっていることも起こります。

時にDeepLは言葉を訳さずのまま放置してしまう

さらに私たちトランスユーロでは、時にDeepLが単語を訳さずに放置してしまうことにも気付きました。例えば、先にサンプルに使ったブログ記事の中のadvanced Japanese learners(上級日本語学習者)はfortgeschrittene Japaner(上級日本語)と訳されてしまいました。これでは意味が別になってしまいます。なお、ドイツ語から日本語に翻訳した場合、用語は正しく翻訳されました。

DeepLの辞書は「辞書」のドイツ語訳を知らない

Dictionary(辞書)という単語を英語からドイツ語に翻訳すると、訳語もDictionaryになってしまいます。Dictionaryはドイツ語ではありません。正しくは、Wörterbuchとなるべきで、こうなった理由を考えると、可能性としてはもととなったドイツ語の翻訳メモリが何らかの理由で「辞書」をDictionaryと記載していたのではないかと思われます。

ここまでで、さすがのDeepLも人による翻訳にはまだまだ及ばないことが分かったと思います。しかし、そこまで正確な訳文を必要としないのであれば、DeepLはテキストの内容をざっくり理解するにはとても有用です。ところが、出版を前提とするような正確な翻訳が必要なテキストでは、DeepLを信用しすぎると失敗する可能性が高いことが分かります。そうなると、誤訳があった場合には節約した翻訳料より、何倍もの高いコストが発生する場面も起こり得ます。

結論として、DeepLで翻訳したものをプロの翻訳者にポストエディットしてもらうことも一案ではありますが、スピードとクオリティの両面でベテランの翻訳者には勝てないことが多いと思います。そのベテランの翻訳者が(機械翻訳ではなく)翻訳支援ソフトを使っていればなおさらです。

今のところDeepLでは日本語の翻訳はできません。将来的に日本語も使用可能になることとDeepLの日本語翻訳の御手並みがどの程度のものかを楽しみに待ちましょう。

皆さんはDeepLを使ったことはありますか?使ったことがあるとしたら、どうでしたか?

 

 

“ドイツ語の翻訳会社が機械翻訳“DeepL”を使用してみた その感想と意見” への2件のフィードバック

  1. Moq より:

    DeepLの日本語版がリリースされたようですね。
    ぜひ、日本語版に関してもこの記事のようなレビューを拝見したいです。

    • transeuro より:

      コメントありがとうございます。日本語版のレビューは現在準備中でして、月曜日に公開する予定です。
      お楽しみにしてください。

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