Blog

  • TOP
  • Blog
  • 知財翻訳検定1級合格にあたり②

2018.12.03

特許翻訳

知財翻訳検定1級合格にあたり②


2017年10月に行われた第25回NIPTAの知財翻訳検定試験において、弊社からは5名の翻訳者が見事に合格を果たしました。そのうち4名は1級の英文和訳試験、1名は独文和訳試験に合格しました。

当ブログでは、これらの合格者に受験体験記を執筆してもらい、シリーズでお届けしていますが、今回はその第3弾として、英文和訳の1級「化学」の試験に合格した弊社翻訳者・矢倉のどかさんの受験体験記をご紹介します。矢倉さんが1級レベルに到達するまでの道のりは、決して楽ではなかったようですが、厳しい特訓を経て着実に実力を身につけたようです。これからプロの特許翻訳者を目指す方にとって、少しでも励みになれば幸いです。

1. これまでの経緯

特許翻訳に興味をもったのは、翻訳ジャーナルに掲載された、ある特許翻訳講座が目にとまったことからでした。当時は大学で専攻した化学の知識を活かして分析会社に勤めていたのですが、好きな英語に携わり、手に職を付けられ、在宅勤務もできるとなれば、これほど魅力的な仕事はないと思いました。そして仕事の傍ら講座を受講し、翻訳会社のチェッカーに転職しました。この仕事を経験したのは1年ほどでしたが、特許翻訳の基本的なスキルを習得し、JTFのほんやく検定2級を取得しました。その後、ドイツ系法律特許事務所に入所し、翻訳者としてキャリアを積んで約10年となります。しばらく実力が伸び悩む時期があったのですが、あることをきっかけにして翻訳のスキルを飛躍的に伸ばすことができました。

2. 英日翻訳技術の向上

 

2.1 翻訳特訓のはじまり

きっかけは、以前所属していた特許事務所の弁理士さんからのフィードバックでした。弁理士さんからは、まず、明細書の翻訳文が直訳すぎて日本語として意味が通じないことを指摘されました。これはドイツ等から出願される明細書は必ずしもきれいな英語ではなく、よく考えずに字面だけで訳すと起こってしまう問題です。それから並列関係や副詞の使い方、句読点の打ち方などを指導されました。この時、読点の打ち方一つで意味が変わってしまうことに和訳の難しさを思い知らされました。このような経緯で上司から翻訳指導を受けることとなりました。

 

2.2.指導内容

翻訳を完了すると、上司に翻訳チェックを依頼し、解釈が間違っている箇所や表現が適切でない箇所には、ワードファイルに変更履歴とコメントを付けてもらいました。これを見て疑問点があれば質問をして同じ間違いを繰り返さないように努めました。上司からは様々なアドバイスを受けたのですが、中でも「話の筋を読め」というアドバイスは、私の翻訳能力を一気に引き上げてくれました。

 

2.3話の筋を読む訓練

このアドバイスに従って、翻訳した明細書の日本語だけを読んで見ると、今まで見えていなかった景色が見えてきたのです。話の筋を追いながら読んでいると、必ず「あれ?」と思うような引っかかる箇所が見つかりました。そのような箇所は、文意を取り違えていたり、単語の係りを間違えていたり、読点の打ち方が適切でないことが多く、最初のうちはその修正に追われました。さらに英文に不備がある場合は、そのまま直訳できないので多少のアレンジを加えました。具体的には、言葉を少し補ったり、語順を入れ替えたり、態を変換したり、同じ単語でも文脈に応じて訳し分けたり等、原文の意味が明確になりかつ日本語としても読みやすくなるよう工夫しました。その際、発明のポイントをノートに取り、その周辺の技術についてよく調査しました。また、この過程で、明細書の誤記や矛盾点にも気付くようになり、より適切な翻訳コメントを残せるようになりました。このような訓練を通して「字面だけの翻訳」から脱却することができたのです。

 3. 在宅勤務

 この度の合格の背景には、会社で導入されている在宅勤務制度もありました。通勤ストレスから解放され、リラックスできる環境で翻訳ができ、ワーク・ライフ・バランスも取れる生活に満足を覚えています。また、時間に余裕ができたので週に数回5kmほどジョギングしました。この運動習慣のお陰で体力や記憶力がアップし、さらに気持ちも明るく前向きになりました。そして、検定試験にチャレンジする意欲も湧いてきたのです。

 

4. 検定試験の感想

 検定試験の問題は1問目のクレーム以外は比較的訳しやすく、普段の実務通りに行いました。最初の2時間ほどで翻訳を終え、残りの1時間はこの難解なクレームの技術内容の調査に充てました。あまり出来た感じはしなかったので、面接の連絡が来た時は、びっくりしました。細かいミスはあったものの、クレーム以外の訳文については加点して頂いて、特訓の成果が出たことを嬉しく思いました。

5. 今後の課題

特許翻訳の業界は、私が参入した10年前よりも厳しさを増していると感じます。「より速くより大量にかつ品質もよく」翻訳することが求められています。近頃はさらに、英語がわかりにくくても、日本語になった時には、すんなり理解できる文になっていることが求められています。これは大変な労力を要することですが、機械翻訳では今のところ実現できていないことでもあります。この機械翻訳ではできない部分を担い、そしてお客様に喜んで頂けるよう、これからも研鑽を続けて参ります。

 

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA


お問い合わせ

Page Top