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2026.07.07
~トランスユーロの知恵ふくろう~ 翻訳・通訳ブログ
欧州で特許を出願・取得するための基礎知識|特許翻訳のタイミングは?

日本企業が欧州で競争優位性を維持し、ビジネスを成功させるには、進出先となる国、もしくは複数の国々で特許権を取得し、自社の知的財産権を保護することが重要になってきます。
そこで本記事では、欧州特許の概要や、欧州で特許を取るための基礎知識について解説します。
また、ドイツ系法律特許事務所から独立・創業して以降、長く日本語⇔ドイツ語・英語、ドイツ語⇔英語の特許翻訳に対応してきた翻訳会社の視点から、日本で特許を出願した後にドイツでも特許を出願する場合の一般的なルートや、翻訳が必要になるタイミングも紹介します。
欧州で特許を出願する上で知っておくべき基本用語を紹介
欧州特許とは何かを確認する前に、まずは欧州特許に関連する基本的な用語を理解しましょう。
以下に、欧州特許の概要を理解する上で知っておくべき5つの用語について簡単に説明するので、ひと通りご確認ください。
【欧州特許の取得を目指す上で知っておくべき5つの用語】
- 1. EPC(欧州特許条約:European Patent Convention)
- 2. EPO(欧州特許庁:European Patent Office)
- 3. PCT(特許協力条約:Patent Cooperation Treaty)
- 4. パリ条約
- 5. ロンドン協定
1. EPC(欧州特許条約:European Patent Convention)
EPCとは、欧州特許条約のことです。多くの国が存在する欧州で特許手続きを効率化、及び一元化するために締結された条約で、1977年に発効されました。2026年6月現在、40ヵ国が加盟しています。
EPC締約国への特許出願窓口としてはEPO(後述)が設置されており、ここで手続きを行えば、すべての締約国で特許の出願・審査・登録資格取得まで終えられる仕組みになっています。
なお、EPCとは「欧州」特許条約のことですが、その締約国はEU加盟国だけではありません。
EUから離脱したイギリスをはじめ、EU非加盟国の北欧の国々やトルコ等もEPCの締約国に含まれています。
2. EPO(欧州特許庁:European Patent Office)
EPOとは、欧州特許庁のことです。先述したEPCに基づき、欧州特許条約締約国の特許のみを所管する国際機関として設立・運営されていて、本部はドイツのミュンヘンに置かれています。
EPOに出願し、審査に通過することができれば、特許を取得したい対象国への有効化(Validation) 、あるいは欧州単一効特許の登録申請を行う上で必要となる欧州特許を取得することができます。
なお、欧州特許、及び欧州単一効特許がそれぞれどのようなものかは、後ほど紹介します。
3. PCT(特許協力条約:Patent Cooperation Treaty)
PCTとは、特許協力条約のことです。同条約は自国に加え、複数の国や地域で特許権を取得したい個人や法人の特許出願手続きを簡略化、効率化することを目的に1978年に発効されました。
本来、複数の国や地域で特許権を取得するには、出願書類一式を公用語等に翻訳した上で、それぞれの国の特許庁へ出願を行う必要があります。PCTは、このような国際的な特許手続きの煩雑さを軽減するための条約で、加盟国は「PCT国際出願制度」を利用できるようになります。
PCT国際出願制度とは、国際的に統一された書式、及び最初の出願国が指定する言語で必要書類一式を作成・提出(=PCTに沿った出願願書を一度提出)することで、すべてのPCT加盟国で同時に出願した場合と同じ法的効果を得られる出願制度です。
日本や欧州の一部の国もPCT加盟国であるため、PCT国際出願を利用した特許出願ができます。
日本からPCT国際出願を行う大まかな手順としては、まずPCT出願用の書式で日本語、または英語の国際出願願書を作成します。これを日本の特許庁に提出すれば、国際出願が成立します。
ただし、PCT国際出願は、あくまで「国際的な特許出願を一括で行うための制度」であり、手続きによって他国での特許権を取得できる、または取得を確約するというものではありません。
他国での特許権が認められるかどうかは、各国の特許庁による審査に委ねられています。
PCT国際出願制度を利用して特許権を取得するには、期限内に特許を取得したい国の特許庁に対して指定言語で国内移行手続きを行い、各国特許庁の審査に通過する必要があるため、注意が必要です。
4. パリ条約
パリ条約とは、1883年に特許権や商標権、意匠権、商号など、工業所有権の保護を目的にパリで締結された条約のことです。先ほど紹介したPCTのベースとなった国際条約の一つです。
欧州に特許を出願する際は、日本で特許出願の手続きをした後、1年以内にパリ条約に基づく「優先権」を主張し、特許権取得を目指す方法もあります。
5. ロンドン協定
ロンドン協定とは、欧州での特許出願時にかかる翻訳コストを緩和するため、2008年に発効された協定です。以前は、EPOへの出願後、EPC加盟国で権利を有効化する際に出願書類一式を各国の公用語に翻訳、提出する必要がありましたが、同協定の参加国ではこれが緩和されます。
ドイツやフランス、イギリスなど、EPCとロンドン協定両方に参加する国で特許出願を行う場合は、一部書類のみ翻訳対応すればよいため、そうでない国で出願する場合に比べ翻訳コストの削減が可能です。
「欧州特許」とは?欧州単一効特許の概要も解説

欧州特許とは、EPOに特許出願を行い、審査手続きをすることで取得できる特許のことです。
ただ先述した通り、EPOへ出願し、審査に通過するだけでEPC締約国においてその特許権が有効になるわけではありません。EPC締約国で特許権を有効化するには、EPOから欧州特許権を付与された後、希望する加盟国で有効化を行うか、単一効特許の申請をする必要があります。
「欧州特許=欧州全域で効力をもつ特許権」という意味ではないので、欧州で特許の取得を検討する際は、十分に注意しましょう。
混同されやすい「欧州単一効特許」の概要
次に、2023年に開始された欧州単一効特許について、欧州特許との違いも含めて説明します。
欧州単一効特許とは、EPC締約国のうち18ヵ国(2024年9月時点)で導入された特許制度です。
EPOへの出願で取得できるという点では欧州特許と同じですが、欧州単一効特許の特徴は、一度有効化手続きを行えば、すべての導入国で特許権を主張できるようになるところにあります。
特許付与通知の公表から1ヵ月以内に、各国での有効化手続きの代わりに一度だけ単一効特許の登録申請手続きをすれば、欧州単一効特許を導入する全18ヵ国において特許権の取得が可能になります。
EPOに出願して欧州での特許取得を目指す場合は、従来型の欧州特許と新設された欧州単一効特許のどちらを取得するのか、出願人が選択することができるのです。
欧州特許と欧州単一効特許の主な違いまとめ
以下の表に、制度・権利有効化の方法・特許権を主張できる国の数を基準に欧州特許と欧州単一効特許の違いをまとめましたので、それぞれの特徴を理解するための参考にしてください。
| 欧州特許 | 欧州単一効特許 | |
|---|---|---|
| 権利・制度の概要 | EPOを窓口とする従来型の制度。
特許権そのものではなく、EPC締約国で国内移行手続き(特許権有効化の手続き)をするための権利。 |
2023年に開始された新しい制度。 EPC締約国のうち、単一効特許を導入する全18ヵ国(2024年9月時点)で通用する特許権。 |
| 権利有効化の方法 | EPOでの審査通過後、EPCに締約する各国で国内移行手続きを行う。 | 特許付与通知公表から1ヵ月以内に、EPOで単一効特許の登録申請手続きを行う。 |
| 特許権を主張できる国の数 | EPC締約国のうち、国内移行手続きを行った国のみ。 | 欧州単一効特許を導入するすべての国。 |
欧州で特許を取得するルートは大きく2つ
私たちトランスユーロでは、日本での特許出願後、欧州の中でも特に経済規模が大きなドイツで出願手続きを行うための特許翻訳についてご相談、ご依頼をいただくケースが多いです。
そこで以下からは、日本で出願した後にドイツでも特許出願する場合を例に、欧州で特許出願をするための「PCTルート(国際出願)」と「パリルート(直接出願)」の概要を紹介します。
1. PCTルート(国際出願)
PCTルートは、先述したPCT国際出願制度を利用してドイツ特許庁に特許を出願する方法です。
まず日本で特許出願した後、日本での特許出願日(優先日)から31ヵ月以内(※)の国内移行期限までに特許明細書をドイツ語に翻訳し、必要書類一式と一緒にドイツ特許商標庁に提出します。
※PCTルートのドイツ国内移行期限は、2022年5月より、30ヵ月から31ヵ月に変更となりました。
出願後に審査を通過し、さらに国内移行手続きを行うと、ドイツでの特許権が有効となります。
なお、審査通過後の国内移行先をドイツではなくEPOにすれば、PCTルートで欧州特許及び欧州単一効特許を取得することもできます。
2. パリルート(直接出願)
パリルートは、パリ条約に基づいた出願方法です。具体的には、まず第一国となる日本で特許を出願した後、第二国としてドイツを選択し、ドイツ特許商標庁に対しても直接出願を行います。
ただし、パリルートで「第一国での出願日を第二国での出願日として適用する」優先権を主張するには、日本で出願してから1年以内にドイツでも出願する必要があるので注意しましょう。
なお、パリルートでドイツ特許商標庁に出願書類を提出する際は、日本語のままでもOKです。
日本語の書面を使ってドイツで出願する場合は、ドイツでの出願日から3ヵ月以内にドイツ語の翻訳文を作成し、追って提出するようにしてください。
出願後、ドイツ特許商標庁に審査請求を行い、審査に通過できれば特許権が有効となります。
ちなみにパリルートでは、第二国の出願先をEPOにすれば、欧州特許及び欧州単一効特許の取得も可能です。
【関連記事】
ドイツでの特許出願 - PCT・EPO・パリ条約
トランスユーロの特許翻訳(特許・実用新案・意匠/商標)について
いずれの特許の種類・取得ルートを選択しても、それぞれメリットとデメリットがあります。
欧州で取得する特許の種類や、取得方法を検討する際には、必ず自社の条件や状況について特許出願の専門家である特許事務所、または代理人弁理士等に相談するようにしてください。
欧州ドイツへの特許出願で翻訳が必要になるタイミングは?

以下からは、ここまでに見てきたPCTルート・パリルートに加え、ドイツ特許商標庁ではなくEPOに出願してドイツでの特許取得を目指す場合の3つのパターン別に、特許翻訳が必要になるタイミングを紹介します。
PCTルート・パリルートでのドイツへの一国出願、またEPOへの出願を経てドイツでの特許取得を目指す場合に特許翻訳が必要になるタイミング、及び期日は、以下の一覧の通りです。
| PCTルートでドイツに一国出願する場合 | ・ドイツ特許商標庁で国内移行手続き(出願)をする時 ・日本でPCT出願をしてから(優先日から)31ヵ月以内 |
| パリルートでドイツに一国出願する場合 | ・第二国であるドイツで特許出願をする時 ・または、日本語での出願日から3ヵ月以内 |
| EPO経由でドイツの特許を取得する場合 | ・原則として、EPOに特許出願をする時 ・日本語などEPO公用語(英独仏語)以外の言語で出願した場合は、出願日から2ヵ月以内 ・EPO公用語で出願した場合は、特許付与予定の通知の発行から4ヵ月以内にクレームを他の2公用語に翻訳して提出する 例)英語で出願した場合は、クレームのみドイツ語とフランス語に翻訳して提出する |
適切なタイミングで特許明細書を翻訳できていないと、出願手続きやレターのやり取りが滞ってしまう恐れもあります。ドイツをはじめとする欧州での特許取得を検討しているなら、特許翻訳の言語や、翻訳対応が必要になるタイミングについても確認しておきましょう。
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