日本とドイツの洪水災害―いずれも問われる行政側の対応―

6月に、観光地として人気がある熱海で大雨による災害が発生しました。土石流で亡くなった方は26名にのぼり、現在も2名が行方不明となっています。また、多数の家屋が損害を受け、倒壊しました。近年、日本では同様の災害を頻繁に目にするようになりましたが、ドイツ、オーストリア、スイスでも、今年は悲惨な洪水が発生しました。

熱海の問題は何だったのか?

 

熱海市では、激しい豪雨の他に、土砂崩れの起点付近の山に県が定めた基準を上回る盛り土があったことも判明しました。それは、許可された15メートルの制限を大幅に超えていました。場所によっては、盛り土の高さが50メートル程もあったそうです。同市土木部門の元職員の証言によると、熱海市は以前からこの状態を把握していたそうです。

ドイツでも行政側の対応のまずさが問われる

 

 ドイツでも行政側の問題が指摘されています。数日前から事前に洪水発生の予報が出ていたにもかかわらず、この情報は住民には広く周知されず、また伝達が遅れたりしました。

これには様々な原因が考えられますが、そのひとつは、ドイツではコスト面の理由から多数の警報サイレンが解体されていたり、メンテナンスが実施されなくなっていて、サイレンが何基存在し、その内の幾つが実際に機能しているのかを知る具体的な情報が欠如していたことでしょう。2020年9月、ドイツでは、ドイツのすべての警報システムを点検するための警報デー(Warntag)が開催されました。ここで、深刻な欠陥が明らかになりました。これらは未だに解消されていないようです。

 

ドイツには日本のようにスマホの警報がない

 

それに加えてドイツには、特定のアプリをインストールしなくても、暴風雨や自然災害の発生時に対象地域の人々にスマホのSMSのような警報メッセージを送信するシステムがありません。日本では、このようなシステムは既にだいぶ以前より、緊急地震速報などの目的で有効に利用されています。原理的には、ドイツでもこのような技術を使用することは可能なはずですが、ドイツのいずれのネットワーク事業者でも未だに導入されていません。ドイツ連邦市民保護・災害救援庁は、導入には3000万から4000万ユーロの費用がかかるとして導入には消極的ですが、災害の専門家にとっては納得できるものではありません。

気候危機を考慮すると、今後はおそらく自然災害に見舞われる頻度が大幅に増えることが予想されるので、これまでは災害の危険性が低いとされていた地域でも、被害を受ける可能性があります。警報システムの導入や防災マニュアルの厳格な運営が今後はますます重要になるでしょう。残念なことに、日本もドイツもまだまだ十分な対策がとられていません。人命が関わる問題なのに、分かっていて放置していることは甚だ理解に苦しみます。

水害で被災された方々に心よりお見舞い申し上げますとともに、一日も早い復興をお祈り申し上げます。


ドイツ語版

記事のドイツ語版はこちらになります。

Flutkatastrophen in Japan und Deutschland – in beiden Fällen Fehler der Behörden

 

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