覗いてみたいウィーン大学 -オーストリア留学日記-

はじめまして、今回より全4回にわたってブログシリーズ『オーストリア留学日記 ウィーン』を担当させていただくmona_tです。

私は日本の大学院で政治学を専攻しており、この春からウィーン大学に留学しています。ウィーン訛りに苦戦しながら大学で研究を行う傍ら、時にオーケストラでヴァイオリンを弾き、プラーターをランニングする日々を送っています。このブログシリーズでは、学生ならではの視点でウィーン、そしてオーストリアの魅力をお届けできればと思いますので、どうぞよろしくお願いします!

さて、今回は『覗いてみたいウィーン大学』と題し、観光やビジネスでウィーンを訪れる方々にとっては足を踏み入れる機会が少ないであろうウィーン大学を、構内案内のような形でご紹介します。

 

ドイツ語圏最古の大学―ウィーン大学の歴史

 

実はウィーン大学(Universität Wien)は、先月3月12日に創立658周年記念日を迎えた、ドイツ語圏で現存する最古の大学です。

中央ヨーロッパ全体ではチェコのカレル大学に次いで2番目に古く、1365年に創立された当時から神学部、法学部、医学部に加えて学芸学部を有する本格的な大学であったとされています。

建学の父はハプスブルク家のルドルフ四世。ハプスブルク家が君主として君臨したのち、ウィーンを帝国の中心として本格的に整備する際の整備事業の1つが、大学という学問の礎を創設することだったのです。

18世紀の半ば以降にはかの女帝マリア・テレジアとヨーゼフ二世による大学改革に伴って教育機関としての自治を失い、このことに対する学生や教授らの不満が、1848年の3月革命の際に一気に噴出し、その後の学問・学芸の自由を求める改革運動へとつながっていきました。

本館(Hauptgebäude)の開校を祝う1884年当時の様子。(大学HPより) Feierliche “Eröffnung” des neuen Universitätsgebäudes durch Kaiser Franz Joseph am 11. Oktober 1884 BestandgeberIn: Archiv der Universität Wien UrheberIn: C. Lier Signatur: 135.435

リング大通りにある現在の本館(Hauptgebäude)が建てられたのは1848年、フランツ・ヨーゼフ一世の時代です。

美貌の皇后エリザベートを生涯愛し続けた「不死鳥」皇帝ですね。様々な様式の建築物が競い合うように並ぶリング大通りの中で、本館の建物はルネサンス様式。

H・フェルステルによる設計で、1848年以後も続いた抑圧からの立ち直りと自由な学芸の復興を象徴しています。

本館の建物は第二次世界大戦でその大部分が焼失してしまいましたが、戦後まもない頃から順次再建され、現在に到るまで改装・増築が繰り返されています。

 

 

 

 

その規模もヨーロッパ屈指―校舎間の移動にドキドキ

 

ドイツ語圏最古の大学ともなるとその歴史にも興味が尽きませんが、この辺で実際に通う学生目線で少しコメントを。

ウィーン大学は、その附属機関を含めると60カ所以上に所在地があり、当然授業を受けたりや研究を行う場所も学生によって様々です。

私自身は本館に行くことが多いのですが、授業によっては本館から徒歩10分ほどのところにあるキャンパス(Uni Wien Campus)に行くこともあります。

このキャンパスの敷地内にはいくつかの建物が集約されていて、レストランやブックショップ、大手スーパーのBILLA、また語学学校(Sprachzentrum)などもこの区画内にあります。

日本にも、キャンパスが複数点在していたり、構内のお店が充実していたりする大学はありますが、大学がこれほどまでに街全体に広がっているのは、やはりウィーン大学がヨーロッパ屈指の規模を誇ることを感じさせます。

 

ところでこの規模の大きさ、学生にとってはなかなか悩ましいものなのです。

 

本館とキャンパス間のように徒歩10分ならまだまだ序の口。校舎が全く違う地区にあり、地下鉄やトラムで移動しなくてはいけないほどの距離・・という場合もいたって普通にあります。

何より厄介なのは、学期中に授業が行われる教室と、試験期間中に試験が行われる教室が違う場合があること!試験の日に、行かなくてはならない校舎を間違えると・・考えるだけで冷や汗が。

幸いなことに私自身はそうした失敗を(まだ)経験したことはありませんが、十分起こり得る失敗パターンでしょう。

また、新学期などで初回の授業の教室を探す時は、どの学生もちょっと神経質になっている印象があります。特にゼミ形式の授業の場合は初回の授業の出席が必須なので、行く校舎を間違えないようにしないといけないのです。

正しい校舎にたどり着いてからも、広い校舎内で自分の教室を探すのがまた一苦労なのですが・・。もちろん、学部によって授業が行われる校舎は大体決まっているので、一度慣れてしまえば大丈夫。

専攻が違う学生同士で自己紹介をするときには、自分の専攻とともにその学部の建物の所在地を説明するのがお決まりになっており、キャンパスが1つしかない大学出身の私には非常に新鮮です。

ちなみにその後の、「そんな所にもキャンパスがあるんだね」「そうそう、全然違う場所だよね~」という会話の流れもお決まり。

私の場合は、オーケストラの練習会場が時々別の校舎になったりするので、そのたびにたどり着けるかちょっとドキドキしていますが、それでもそれぞれの校舎に個性があって面白いと感じます。

まだまだ知らない校舎や研究棟があり、興味は尽きません。

本館の階段。かつてこの階段を登った所に哲学科の学部があったことから、“Die Philosophenstiege“「哲学の階段」の名が定着したとか。重厚かつ壮麗な造りに圧倒されます。

 

このように、一言にウィーン大学と言っても校舎によって場所も建物も様々に異なることがおわかりいただけたかと思います。

すべてをご紹介するのは難しいので、今回は特に本館の図書館ホール、そして別の校舎にある食堂(Menza)をご紹介したいと思います。

 

Die Wiener Universitätsbibliothek勉強もはかどる・・?壮麗な図書館

 

その外観はもちろん、内装もまるで宮殿のような本館の校舎ですが、なかでも図書館(Die Wiener Universitätsbibliothek)は、まるでかの有名な魔法学校に迷い込んだかのような美しさ。

ウィーン大学には専門ごとに分かれた40もの図書館がありますが、その中でも本館にある図書館は約270万冊の蔵書を誇る、ドイツ語圏最古にしてオーストリア最大の図書館です。

その見た目と歴史から、ホコリをかぶった分厚い百科事典が出てきそうなイメージをもたれるかもしれませんが、そんなことはありません。

文献や蔵書はデジタル版で手に入るものも多く、パソコンを持ち込んで勉強をするのにもぴったりな環境が整っています。

昨年はコロナ対策のため貸出し本の受け取りだけでなく、自習スペースの利用にも完全予約制がとられていましたが、その利用手順も完全にデジタルです。

オンラインで予約可能な日時を選ぶとQRコードが発行され、それを提示して何時から何時まで利用する、という仕組みになっていました。現在はそうした措置も解除され、自由に出入りできるようになっています。

本館の図書館。ずっと居たくなるから勉強もはかどる・・?

 

Festsale―世紀末ウィーンの歴史を感じる、クリムトの天井画があるホール

 

そしてぜひご紹介したいのが、豪華な広間です。

 

記念式典や学術会議などのために造られ、大ホール(Großer Festsaal)小ホール(Kleiner Festsaal)に加え、より小規模な会議用ホール(Sanatssaal)に分かれています。

大ホールにはルドルフ四世とマリア・テレジアの彫像があり、またその天井画は、19世紀後半から20世紀前半を生きた、ウィーン世紀末芸術を代表するグスタフ・クリムト(Gustav Klimt)によるもの・・の複製です。

第二次世界大戦中、別の場所に保管されていた天井画ですが、クリムト以外の画家が描いた作品を含め残念ながら焼失してしまいました。

現在見ることができるのは、2005年にレオポルト博物館(Leopold Museum)の協力によって原寸通りに制作された複製です。

ちなみにこの天井画は、制作された当時にはかなりの物議を醸したようです。というのも、哲学、医学、法学の3つの学部をそれぞれ象徴する絵を担当してほしい、と依頼されたクリムトが描いたのは、裸体の女性たち。

クリムトの斬新な解釈と写実的な絵画技法は、教授陣をはじめ様々な人びとに衝撃を与えたようです。

あまりに世論の批判が大きかったため、クリムトの制作した絵画は採用を見送りに。怒ったクリムトはすでに受け取っていた報酬の前金を突き返し、クリムトと芸術の自由を擁護する教育省大臣は辞任し・・と、この一件は20世紀の芸術界における最大のスキャンダルになったとか。

現在は記念式典などの際に使用されるほか、私が所属するオーケストラもここで演奏会を行ったりします。ウィーン大学に足を踏み入れる機会があれば、ぜひ覗いてみてほしい場所です

 

大ホール(Großer Festsaal)思わずため息が出る豪華な内装。(大学HPより)

 

 

学生のオアシス、メンザ(Menza)

 

当アカデミーのブログにはこれまでにもドイツの学食(メンザ)についての記事が掲載されていたことがあり、こちらもうんうん、そうだよな・・とうなずきながら読んでいた私ですが、ウィーン大学のメンザはどうか?というと、個人的には期待するほど値段が安くない、というのが正直なところです。

 

曜日ごとに違う「本日のメニュー」が2種類ほどあり、片方は肉類(金曜日は魚)のメニュー、もう一方はベジタリアンメニューであることが多いのですが、どちらも大体6ユーロくらい。

そこに本日のスープや本日のサラダが付けられて、セットにするとそれぞれ1ユーロになりますが、単品でこの副菜を買うと2ユーロです。学生組合の割引を利用しても毎週通うわけにはいかない・・というところでしょうか。

私にとって新鮮なのは、注文する際に「このメニューはビーガンか?」というような質問をする学生がちらほらいること。

普段スーパーマーケットで買い物をしていても感じることではありますが、宗教的な理由に加えて、個人の選択としてもベジタリアンやビーガンがより浸透しているということなのでしょう。

特に学生のような若い世代は、料理の原材料の産地や生産方法などを含め、「食」に対するアンテナがよりぴんと張られていると感じます。

ご紹介したウィーン大学のメンザは、個人的には日本の学食と比べるとメニューの豊富さの点でも、値段の安さという点でも少し物足りなさを感じました。

でもやっぱり誰かが「Mahlzeit!(召し上がれ!)」と言ってくれる空間は、留学中という環境の中では特別。授業や課題に追われてこわばった心をほぐしてくれるオアシスです。

 

いかがでしたか?

今回ご紹介しきれなかった魅力が他にもたくさんあるウィーン大学ですが、実は週に2回ほど、ガイド付きの公式ツアーを開催しています!

時期によってツアーの場所や内容が変わりますので、ぜひ大学のホームページをチェックして頂いた上で、このブログを読んで、ウィーン大学を覗いてみたい!と思った方は、今度ウィーンにいらっしゃった際にぜひ参加してみてくださいね。

 


参考

●ウィーン大学ホームページ

・Universität Wien (univie.ac.at)

・650 plus | Geschichte der Universität Wien (https://geschichte.univie.ac.at/de)

・Das Hauptgebäude der Universität Wien an der Ringstraße | 650 plus (https://geschichte.univie.ac.at/de/themen/das-hauptgebaeude-der-universitaet-wien-der-ringstrasse)

・Die Fakultätsbilder von Gustav Klimt im Festsaal der Universität Wien | 650 plus (univie.ac.at) (https://geschichte.univie.ac.at/de/artikel/die-fakultaetsbilder-von-gustav-klimt-im-festsaal-der-universitaet-wien)

●田口晃『ウィーン-都市の近代』岩波書店、2008年


「オーストリア留学日記 ウィーン」次回は5月に更新です。どうぞお楽しみに!

Comments

(0 Comments)

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA