ドイツ人の環境意識

ドイツは環境先進国といわれています。今去年(2019)5月の欧州議会選挙で躍進した同盟90/緑の党は、選挙後の世論調査で支持率が首位になりました。ドイツでは、カーシェアリング、ゴミの分別、再生可能エネルギー、昨今は石灰火力からの脱却など環境問題に対する取り組みは広く、世界をけん引する勢いです。今回はドイツ人の環境意識の高さについてお伝えします。

 

日常生活における対策

 

環境対策と一口に言ってもかなり様々な政策、対策がありますが、ドイツの日常生活の中で最初に気づくのは、簡素な包装でしょうか。レジ袋が有料というだけでなく、パッケージそのものが簡素です。たとえばケーキやパンは小さな紙袋にそのまま入れ、野菜なども量り売りが主流です。プラスチックトレイもありますが、日本ほど多用されていません。また飲み物もペットボトルではなく、瓶が主流で、デポジットも購入時に25セント上乗せされるので、きちんと返す人が大半です。このような日常生活における政策は、経済成長を妨げることなく行われおり、また成果もあげています。

 

政治と環境問題

 

政治の局面ではどうでしょう。2019年5月に行われた欧州議会選挙では、同盟90/緑の党の躍進が著しく、ドイツでは全体で20%、2位の地位につけました。緑の党とは、いわゆる環境主義、多文化主義、反戦などを主な主義とした世界的に展開している政党ですが、ドイツでは1970年代終わりに右翼的な環境保護運動が連合する形「諸派・緑の党」として設立されました。その後、60年代の左翼的学生運動を呼び込み、「緑の党」として政党を確立させました。東西ドイツ統一後は、東ドイツの民主化にかかわった市民グループが同盟90を結成し、1993年に緑の党と統合しました。

 

ドイツ人の環境意識

 

ドイツ人の環境意識の高さは、環境問題への政治的アプローチに加えて、環境教育が整っている点も大きな一因となっているようです。例えば、バイエルン州では「自然と環境に対する責任感をつける」といった教育方針が掲げられており、ギムナジウムでは、環境と政治、化学など学際的な視野からの学びとディスカッションが授業で行われています。校舎は環境に配慮した設備になっており、国内各地には、自然体験学習や環境保護活動を推進するエコセンターも身近な存在のようです。

このような環境教育が根付く土壌が元々ドイツにはあったといえます。19世紀後半、急速に進んだ工業化による生活環境の悪化により、「自然への回帰」がモットーとして掲げられ、自然の価値が新しく確立したという歴史があり、そこには今日のエコロジー的意識の萌芽がすでに見いだせるのではないでしょうか。

また、別の側面では、ドイツでは市民運動としてのデモやストライキが盛んで、市民の声が社会制度を変える力を持っているので、環境問題に対してのみならず、全般的にひとりひとりの政治意識が高いことも、環境意識の高さの基盤となっているかもしれません。そしてなにより、古代ゲルマン民族まで遡らずとも、ドイツ人にとっての「森」は、文化的アイデンティティを形成している重要なファクターと言われています。

最近の大きな話題としては、スウェーデンの16歳の少女グレタ・トゥーンベリさんによる気候変動問題のための学校ストライキが世界中に広まり、ドイツでは“Freitage für die Zukunft”(未来のための金曜日)という名前で環境保護のための学生運動が活発になっています。

 


参考HP

 

 

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