シュタイナー教育 

旧オーストリア帝国生まれの哲学者、神秘思想家、教育者であるルドルフ・シュタイナーが提唱した教育法であるシュタイナー教育をご存じですか?主流の教育法とは異なる思想と方法が取り入れられているオルタナティブ教育のひとつとして世界中に展開しており、シュタイナー学校の数は1000校以上にものぼります。日本でも7校のシュタイナー学校が存在しており、そのうち2校は学校法人にもなっています。今回は、創造性と感性を重視し、人間形成を図るシュタイナー教育についてお伝えします。

 

ルドルフ・シュタイナー(1900年)
ルドルフ・シュタイナー(1900年)

ルドルフ・シュタイナーとは

 

シュタイナー教育の創始者であるルドルフ・シュタイナー(1861‐1925)は旧オーストリア帝国辺境であるクラリエヴェック(現クロアチア・ザグレブ近郊)で誕生しました。ウィーン工科大学では教職課程で数学、生物学、科学、物理学を学ぶ一方で、自然科学では解明できない、超感覚的世界にも大きな興味を示していました。また、若くしてゲーテの著作の編集者として抜擢され、29歳からはゲーテ・シラー文庫でも勤務しており、ゲーテ研究に没頭し、自身の哲学の軸を形成し、近代自然科学や物質主義への批判もこめて、内なる魂の世界への研究を進めました。その後、神秘的世界を取り扱う神智学との出会いを経て、霊的直観を基礎とした人智学(Anthroposophie)を立ち上げました。

19世紀末から20世紀に入り、世界大戦という混乱期に、シュタイナーの思想はナチスからも攻撃を受けつつ、また一方では反ユダヤ主義と扱われることもありました。

また、彼のオルタナティブで一種奇怪な思想は、ドイツのアカデミズム界においても、学問的に彼の研究について語ることの難しさや、取り扱いにくさがあるともされるほどに、ドイツ精神史の中では異彩を放つ思想であることは確かのようです。

シュタイナー教育の特徴 

 

彼の独特な思想が反映されているシュタイナー教育ですが、

ある種のオカルティズムとして展開された彼の人智学、そしてその思想が反映されたシュタイナー学校は、1919年にヴァルドルフ・アストリア煙草会社工場で働く労働者の子供たちのための教育の場としてシュトゥットガルトで初めて設立されました。この学校が由来となって、英米圏とドイツ語圏では、シュタイナー・ヴァルドルフ学校/教育(Steiner Waldorfschule/Freie Waldorfschule)と呼ばれています。

小中高一貫教育であるシュタイナー学校の特徴は、人間の発達段階を7年周期とし、それぞれの段階に応じた教育方法の実践です。。学習を情報の入力と出力とは考えず、年齢に沿った中心課題となるテーマと関連したカリキュラムが組まれ、内面的人間性を育むことを目指しています。また、8年間(学校によっては9年間)同じ先生が担任となるのも特徴的です。

そして線を書くことで物の形を理解する芸術教育「フォルメン」と、言葉のもつ子音や母音などといった目に見えないものを身体的に表現する運動芸術「オイリュトミー」も必須学科となっています。なんだか難しそうですね…。さらには教科書を使わない方針で、かなり独特なカリキュラムのようです。

大まかな紹介になりましたが、その方針には複雑な思想が根底にあり、シュタイナー学校の実践には一定の評価がありつつも、シュタイナー自身の思想は敬遠される傾向も強いそうです。

ドイツには232校、アメリカ125校、オランダ90校、イギリス30校(2015年現在)をはじめとして世界40ヵ国で展開しているシュタイナー学校。100年以上にわたる歴史は今後も受け継がれていくことでしょう。


 参HP

参考文献

  • 小杉英了 シュタイナー入門 ちくま新書 2000
  • クリストファー・クラウダ― マーティン・ローソン著 遠藤孝夫訳 新訂版シュタイナー教育 イザラ書房 2015
  • 衛藤吉則 シュタイナー教育思想の再構築 ナカニシヤ出版 2018

 

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