ドイツのジェネレーションZ

 

ジェネレーションZといえば、1997年~2012年の間に生まれ、幼い頃からパソコンや携帯電話に囲まれて育った「デジタルネイティブ」世代です。そんな若い彼らも成長し、ドイツでも労働市場に徐々に流入してきています。他の世代とは異なる価値観を持つジェネレーションZ。ドイツの若いジェネレーションZの仕事に対する考え方とは、どのようなものでしょうか?

 

ジェネレーションZは怠け者?ワガママなのか?

 

日本人の私からすれば、ドイツ人はこれまででも「仕事」と「私生活」の区別をきっちりしていた印象がありますが、ドイツのジェネレーションZは、さらにこの傾向が強いようです。

 

「超過労働は会社による搾取だから、絶対にやらない」、「重要な仕事の締め切りが迫っていても、週末は絶対に仕事はしない」、「私生活とのバランスを取りたいから、ホームオフィスを希望」、「プライベートを優先させたいから時短勤務が良い」などなど、就職にあたってドイツのジェネレーションZが雇用主側に求める要求は高く、採用担当者も困っているケースが多いそうなのです。

「怠け者」、「ワガママ」とも受け取られそうなジェネレーションZですが、実際のところ、採用の際に彼らの要求がしっかり通っていることが多いというので驚きです。

その背景として、ドイツの労働市場における切迫した「人材不足」問題があります。今後数年以内にドイツではベビーブーマー世代がどっと定年退職し、その労働力の大きな穴を埋めるのは、少子化が進んだジェネレーションZです。

このため、就職の交渉で圧倒的に有利なのは、雇用主ではなく、求職者のジェネレーションZなのだそう。

またジェネレーションZは、物心つく頃からソーシャルメディア、スマートフォンに囲まれた「デジタルネイティブ」世代であり、全般的に教育レベルが高いため、特に専門職の人材不足が切迫しているドイツの労働市場では、彼らが職探しに困ることはないと言われています。

1946年~1964年の間に生まれた戦後のベビーブーマー世代の人達は、職を失ってはならないという不安から、当たり前のように超過労働もこなし、会社のために尽くして働き、現在のドイツ社会を築き上げてきた世代です。彼らからしてみれば、「これからヨガだから、17時きっかりに仕事を終えて帰りまーす!」と私生活を絶対に優先させるジェネレーションZは、理解不能だったり、また不公平に思えるかもしれませんね。

 

ジェネレーションZが働き方の意識を変える

 

しかし、本当にジェネレーションZはワガママで怠け者なのでしょうか?

ジェネレーションZは、気候変動やパンデミック、ヨーロッパにおけるロシア・ウクライナ危機といった危機に直面している世代でもあります。

親の世代が達成できた豊かな生活に自分たちは一生手が届かないかもしれない。それだったら、「会社に搾取されるのはまっぴら御免だから時間外労働はしない」「貰う給料分の仕事しかしない」「仕事よりも私生活を優先」と非常に合理的な考えを持っているようです。

またFridays for Futureの影響を大きく受けて育ったドイツのジェネレーションZの特徴として、「仕事は単にお金を稼ぐための手段というだけでなく、そこに意義や価値観を見出したい」、「世界をより良い場所にしたい」という気持ちが強いという傾向も強いそうです。仕事に対するモチベーションはあるけれど、「働き者」=「会社にいる時間が単に長い」という定義は、彼らには当てはまらないのです。

ドイツの会社には、若いジェネレーションZが必要です。ワガママな要求を通すジェネレーションZなんて理解できないと首を振り、採用しないのか、あるいは彼らの考え方や価値観に合わせて会社の意識改革を進めるのか?

今後、ジェネレーションZがドイツにおける働き方を根本的に変えてしまうかもしれないと言われています。もしかすると、彼らによって、「残業」そのものがドイツから消滅する日が来るのかもしれません。

 


参考

・https://de.wikipedia.org/wiki/Generation_Z#Mentalit%C3%A4t_und_Verhalten

・Süddeutsche Zeitung Nr. 59 11./12. März 2023, Seite 23

・https://times.mazrica.com/column/characteristics-of-generaton-z/

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