モーツァルトクーゲル(Mozartkugel)その2(完結編)
目次
前回に引き続き、モーツァルトクーゲルの話となりますので、もう少しお付き合いください。
今回は完結編ということで、私がザルツブルクに行くたびについつい買ってしまう筆者いちおしのモーツァルトクーゲルも登場しますので、ご期待ください!
そもそもモーツァルトクーゲルの誕生はいつ?
モーツァルトクーゲルは1890年にPaul Fürst(パウル・フルスト)というザルツブルク出身の職人によって産み出されます。
元々は„Mozart-Bonbon“(モーツァルト・ボンボン)という名前だったそうです。

1905年にパリで行われた国際栄養衛生博覧会(Exposition Internationale d’Alimentation et d’Hygiène Appliquée)でなんと金賞を受賞した絶品となります。
その様な歴史もあり、ザルツブルクの周辺でかなり有名なお菓子になります。
お菓子作りに夢中で、「あること」を忘れてしまった!?
Paul Fürstは職人気質であり、モーツァルトクーゲルをいかに完璧な球体に近づけられるかにこだわり、試行錯誤を重ね、お菓子作りに没頭します。
夢中になるあまり、特許の申請を忘れてしまい、後々、問題になります。
問題その1:「模倣品の製造」
金賞を受賞したことにより、Paul Fürstの考案したモーツァルトクーゲルは注目を浴びるようになりました。
しかし特許が申請されていなかったことにより、これは参入のチャンスとばかりに模倣する人が後を絶ちませんでした。
その結果、Paul Fürstの子孫達が法廷で争うという大事になってしまいます。
問題その2:「紛らわしい名前」
レシピや形状は模倣されてしまったものの、Paul Fürstには一つだけ譲れないものがありました。
それはこのお菓子の名前です。
しかし、前回のブログでも触れたように、今やさまざまなメーカーがオリジナルを思わせる名前を掲げるという紛らわしい事態となっており、モーツァルトクーゲルの歴史を知らない観光客にとっては、どれがPaul Fürstの付けた名前なのかを見分けるのは難解となっています。
簡単な3択クイズになりますが、以下のどれがPaul Fürstのモーツァルトクーゲルだと思いますか?
1. Echte Salzburger Mozartkugeln
2. Original Salzburger Mozartkugeln
3. Austria Mozart Kugeln
正解は、、、、、、

2です!
https://www.original-mozartkugel.com/de/
1と思った方もいるかもしれません。
特に「Echte」というのは「本物の、本当の」という意味があり、かなりややこしい表現です。
日本語訳をするのであれば、「Original」を「本家」や「元祖」という風にした方が、イメージが湧きやすいと思います。
この菓子の由来となったモーツァルト本人も、亡くなった後に自分の名前を冠したチョコレート菓子が売り出されていることにびっくりしていると思いますし、さらに商標権の争いにもなっているとは夢にも思っていないと思います。
モーツァルト自身がそもそもチョコレート好きなのかも不明です。
モーツァルトクーゲルの中身
お店によって内容が一部異なるそうですが、元祖のお店「Fürst」では、マジパン、ピスタチオ、ヌガー、ダークチョコレートが使われています。
またほとんどの会社が機械により大量生産をしていますが、元祖のお店では今も創業当時と変わらず、手作りにこだわっています。
私も10種類ぐらいのモーツァルトクーゲルを食べ比べましたが、やはり「Fürst」の手作りのモーツァルトクーゲルが一番美味しいです。
その代わり1つ2,1€という高価なものになるので、色々な人にお土産に持っていくというよりは、自分へのご褒美用に買うイメージになります。
仕事でザルツブルクに行くことがありますが、毎回このモーツァルトクーゲルを買うのが楽しみになっています。
モーツァルトクーゲルを巡る争いは続く
衝撃的な情報が入ってきました。
前回記事を作成した後にモーツァルトクーゲルの本家に関して、根幹を揺るがす記事が発表されました。

つまり最初のモーツァルトクーゲルは1890年ではなく、それより9年前の1881年に
Rudolf Baumannという職人がモーツァルトクーゲルを販売していたというショッキングな新聞記事が発見されたのです。
そのRudolf Baumannの引退後、モーツァルトクーゲルの製造は引き継がれ、最終的には1919年にJosef Holzermayrが引き継ぎました。
しかもJosef Holzermayrの名前が使われた「Josef Holzermayr」というお店が現在も残っており、「Echte Salzburger Mozartkugeln」(先ほどの3択クイズの1)を販売しています。
その為、「Josef Holzermayr」が「Originalrezept(元祖のレシピ)」で、私たちのモーツァルトクーゲルこそが「Original(元祖)」であると主張をしています。
今後もおそらく「Original(元祖)」を巡る法廷上での争いが続くと思います。
2026年(来年)はモーツァルト生誕270年の記念の年にもあたり、コンサートの選曲もモーツァルト関連の曲が増え、モーツァルト関連の話題が絶えない年になると思います。
元祖争いは別として、ぜひザルツブルクにお立ち寄りの際は、筆者いちおしの「Fürst」のモーツァルトクーゲルを探してみてください。
また皆様にお会いできるのを楽しみにしております!

ウィーン在住。学生時代にドイツのフンボルト大学留学、過去にはトランスユーロにて勤務経験あり。
社会人になってから、初めてウィーンに渡り魅力的なカフェハウスや歴史的建造物に感銘を受ける。
オーストリア国家公認ガイドの資格を取得後、日常的に団体旅行、音楽学生ツアー、個人旅行や会社視察を担当し、ウィーンを中心にガイド活動しています。日本にいる方にも魅力を届けたいとの思いから、オンラインツアーもスタート。この度はブログにて現地ガイドならではのオーストリアの話をゆる~く発信していきたいと思います!インスタグラムでも情報を発信しておりますので、気になる方はぜひどうぞ!

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