受験戦争―日本とドイツ、厳しいのはどっち?

日本は受験シーズン真っただ中ですね。少子化とはいえ今日でも世知辛い受験戦争が毎年繰り広げられている日本社会ですが、ドイツでは一体どのようなシステムで大学に入学しているのでしょう。


大学入試はないけれど…

 

実は、ドイツにはいわゆる大学入試試験はありません。日本とは全く異なる教育システムのため、小学校を卒業する10歳の時に大学進学を目指すかどうかの進路を選択する必要があります。(ドイツの教育制度)この場合、8年制(もしくは9年制)のギムナジウム(中等教育機関)に進んだ後、アビトゥーアとよばれる卒業資格試験を受けることになります。このアビトゥーアに合格することが大学入学の資格となります。

ドイツの大学は基本的に大学入試が無いと書きましたが、学科によっては入学制限がかかるため入試に相当する試験が行われる場合もあり、芸術系や音楽大学などでも技能試験や自分の作品の提示が入学条件になる場合があります。

ちなみにドイツのギムナジウムへの進学率(2017年度)は40パーセントです。そして大学入学者の割合は、2002年時点では37,3%でしたが、2008年に40%を超え、2011年には前年から9%あがった55%、2013年には58.3%と過去最高で、2019年には56.2%となりました。(Statista調べ)この20年弱でこれだけ大学入学者が増えていることにも驚きですが、そもそも2000年代初頭の大学入学者が40%にも満たなかったこともかなり意外な事実かもしれません。

受験のチャンスは二度まで!

 

アビトゥーアに受かれば大学入試がないなんて!と思いますか?いえいえ、このアビトゥーアが大変なのです。5科目を選択し、(ドイツ語、外国語、数学は必須な所が多く、あとは自然科学と人文科学からの選択)1科目の筆記試験はなんと5時間にも及ぶそうです。そして試験に通るだけではなく、点数も重要なポイントで、希望の学部に入学制限がかかっている場合などはアビトゥーアの試験成績も重視されるのです。

そしてアビトゥーアだけに限りませんが、ドイツの国家試験、大学卒業試験、さらには外国人大学志願者のためのドイツ語語学試験(DSH)などの重要な試験の多くは、2度までしか受験することができません。司法試験などに至っては、二度の試験に落ちると、大学の法学部の卒業資格もなくなってしまうというシビアなシステムが採用されています。

とあるドイツ人の友人は、高校を卒業して10年以上経っても未だにアビトゥーアの試験の夢をみることもあり、目が覚める度に「夢か…、試験が通って本当によかった」と胸をなでおろすことがあると聞きました。

二度しか受けられない試験へのプレッシャーは、もしかしたら日本の受験戦争よりも重いものかもしれませんね。しかし、日本でも1年浪人してしまうと、その社会的プレッシャーはやはり苦しいものです。

試験続きの季節ですが、苦しい試験を乗り越えて、笑顔で春を迎えてほしいものです。


参考HP

 

 

 

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  • ドイツの大学 学費が無料?国際的な評価は? – トランスユーロアカデミー

    […] 日本とドイツの大学の違いとはなんでしょう。以前にもお伝えしましたが、大学入試制度の違いは、最初の大きな違いですね(受験戦争―日本とドイツ、厳しいのはどっち?)。日本のように大学入試の受験戦争がないとはいえ、厳しい卒業資格試験が存在するドイツ。しかし、10歳で進路を決め、卒業資格試験の受験は2度しか与えられていないことを考えると、後戻りできない分、ドイツの方が厳しい道といえるかもしれません。 […]

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