アウトバーン 速度無制限道路の未来

ドイツといえばアウトバーン。車好きの方にはこの印象が強いのではないでしょうか。日本の高速自動車国道に相当するアウトバーンは、速度無制限道路として有名で、ドイツ全土を網羅しており、料金は無料です(大型トラックは有料化が図られている)。今回は、ヒトラーの遺産ともいわれるこのアウトバーンについてお伝えします。

アウトバーンとは?

 

スピード制限なしと聞いて、どんな恐ろしい空間が拡がっているのだろう?と思っていたのは私だけでしょうか。ドイツのアウトバーンは、速度無制限とは謳うものの、大型トラックやバスの走行には制限があります。渋滞しやすい区間、勾配の急な区間には、100~130 km/hの制限速度が設けられており、速度無制限区間においても130km/hが推奨速度とされているのが実情です。このように、アウトバーンといえども、全区間にわたり完全無制限というわけではなく、無制限区間にあたるのは全体の70%です。
アウトバーンはしばしば、ヒトラーの唯一の功績とも称されていますが、構想としてはドイツ帝国時代、ヴァイマール共和国時代から始まっていました。本格的にアウトバーン建設計画が動き始めるのは1933年、ヒトラーが政権を握り、1929年の世界大恐慌による大不況の失業者対策のために打ち出された経済政策として実行されました。加えて、大衆への自動車普及と「新しいドイツの建設」というモットーを掲げることで、ナチス政権のプロパガンダにも利用されました。

アウトバーンを示す標識
 アウトバーンを示す標識

ドイツのジレンマ、却下される制限速度規制案

 

現代では、スピード制限なしにも拘わらず、安全性も高いと賞賛されるアウトバーンですが、環境保全が声高に叫ばれる今日では、大きな問題の種にもなっています。ドイツ国内で2019年に温暖化対策の一環である二酸化炭素排出量削減に向け、制限速度規制案が提出されました。しかしドイツ連邦議会は法案を否決。圧倒的に反対票が多かったとのことです。他国に比べて環境意識が高いといわれるドイツですが、国の主要産業である自動車産業、ひいてはアウトバーンに関する問題に関しては、一筋縄ではいかないようです。法案が否決される理由には、経済競争力の要ともなるドイツ国産車メーカーを支えるため、そして国内雇用を維持するためには譲れない点であると分析されています。一方、世論調査によると、制限速度規制導入に対し、賛成が52%、反対が46%と世論はほぼ真二つに割れているようです。
環境に関する生活習慣や政策においては一目置かれているドイツですが、殊に自動車分野、電機分野においては歯切れが悪く、対策も不十分として、ダブルスタンダードだと批判も受けているようです。

自転車、鉄道やトラムなどの公共機関への乗り換えや、カーシェアリングも奨められていますが、自動車発祥国としての誇りもあるのでしょう。ドイツは、環境保全と経済維持のジレンマをどのように乗り越えていくのでしょうか。


参考HP

参考文献 

  • 『知ってほしい国 ドイツ』編集 新野守広 他 「ヒットラーの作ったアウトバーン」14-17 梶谷雄二 高文研 2017

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