ドイツ人と森~失われていくドイツの森~

ドイツといえば森。誰でも思い浮かべるイメージですが、日本の森林面積は国土の三分の二を占める66%もある一方、ドイツの森林面積は全体の32%で1140万ヘクタールです。それにもかかわらず、ドイツにおける森の文化的意義は大きく、人々の生活に密着したものとなっています。数あるドイツの森ですが、その中でも今日は黒い森を手掛かりにドイツ人と森の関係にフォーカスしてみたいと思います。

黒い森とは

 

黒い森(Schwarzwald/シュヴァルツヴァルト)とは、南西ドイツ、バーデン=ヴュルテンブルク州に位置しており、南北160㎞、東西30~50kmに及ぶ広大な森林地帯です。西側ではライン川が南北に流れており、川の対岸はフランス・アルザス地方です。黒い森という名の由来は、密集するドイツトウヒ(常緑針葉樹でモミの木に似ている)によって黒く見えることからその名がついたとのことです。日本ではさほど知名度は高くないかもしれませんが、ドイツ国内では人気の保養地であり、観光業や林業が盛んな土地です。また、鳩時計の原産地でもあることでも有名です。牧歌的な風景と深い森は、ドイツメルヘンの世界を彷彿させます。

ドイツ人と森、Waldsterben2.0

 

黒い森は、ドイツ人にとっても人気の観光地ですが、非日常性を楽しむ観光スポットというよりは、精神的な故郷という価値と意味合いを含んでいるようです。ドイツ人の祖先といわれるゲルマン民族は森の民ともいわれ、太古からの結びつきが深いがゆえに、森はその精神性を育んでいるともいわれています。とはいえ、このような見解は、19世紀のロマン主義時代や、ナチス時代に行われたドイツ的国民性をシンボル化するためのプロパガンダであったという意見も見逃すことはできません。

とはいえ、やはりドイツ人の森林へ愛情の深さはしっかりと根付いているように感じます。産業革命以降の急激な工業化による森林伐採や、1980年代に起こった酸性雨による黒い森の樹木の立ち枯れにドイツ人は大きなショックを受け、Waldsterben-「森林枯死」ということばがキーワードにもなりました。

そして、昨今のヨーロッパにおける異常な猛暑もこの状況を悪化させており、今日ではWaldsterben2.0とまでいわれています。猛暑による水不足により、過去二年間でドイツ国内では100億本にも及ぶ古木が枯死したと伝えられています。また山火事による被害も深刻で、昨年だけでも2349ヘクタールの森が火事で失われました。このような森林被害は年々増大しており、改善の余地がみえないのが実情のようです。

環境保護先進国として名高いドイツですが、森に対する保護も試行錯誤を繰り返し、様々な議論が交われているようです。豊かな自然を誇り、その精神性を支えるドイツの森の復興を願うばかりです。


参考HP

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