ブルシェンシャフト―ドイツの学生同盟

サークルや部活など、日本の学校生活の中で結成されるグループ組織はドイツには存在しません。運動系のクラブは教育機関から独立したスポーツクラブ(Sportverein)がその代わりと言えます。しかし、ドイツには独自の歴史によって成立した学生同盟―ブルシェンシャフト(Burschenschaft)というものが存在します。19世紀前半に誕生したこの同盟は、近代の様々な歴史的変動や制圧を乗り越えて今日も存在しており、同盟内の規則はかなり独特で、真剣を使った「決闘」までも存在するそうです。

 

ブルシェンシャフトによるヴァルトブルクの祭典(1817)が行われたアイゼナハ近郊のヴァルトブルグ城

 

 

ブルシェンシャフトとは?

 

学生同盟と訳されるこのブルシェンシャフト、厳密には、いわゆる学生互助会(Studentenverbindung)に属する学生同盟のひとつで、他にも様々な思想と理念を掲げる同盟(Corps/コーア, Landsmannschhaft/ランツマンシャフトなど)が存在します。
ブルシェンシャフトはナポレオン戦争後にドイツ国内の大学生よって発足し、愛国主義的結社として、1815年に創設されました。愛国主義と言っても、現代のような極右的なものではなく、当初は、ドイツの自由と祖国の精神的統一が目指されていました。1817年にはアイゼナハ近郊のヴァルトブルクで盛大な祭典が行われ、ドイツ国内のナショナリズムを高揚させたことがドイツ史の一ページを刻む大きな出来事となり、これが他の学生互助会と一線を画す理由のようです。

その後の歴史は割愛しますが、第二次世界大戦後も脈々と受け継がれ、今日でもドイツ国内で1000ほどの学生互助会が存在し、そのうちブルシェンシャフトは158団体が存在しています。

 

https://commons.wikimedia.org/wiki/File:M%C3%BChlberg_-_S%C3%A4belmensur.jpg

 

 

謎と秘密に満ちた学生同盟、熱き男たちの魂のぶつかり合い

 

ブルシェンシャフトのような学生同盟は、学生の団体とはいえ、いわば秘密結社的な特徴があります。男性のみが入会可能で、同盟内では様々な儀式が存在し、厳しい規則と慣習を守り、ユニフォームもあり、組織の士気と友好を高める要素で満ち溢れているそうです。入会するメリットは、ブルシェンシャフトが所有する館に格安で住めること、OB会員と知り合い、就職のためのコネクション作りができること、いわばエリート養成機関としての機能もあること、だそうです。これらの点について、アメリカの大統領などが属しているといわれるアメリカの学生秘密結社(フラタニティ)との類似性も指摘されています。

しかし、なんといっても衝撃的なのは、一部の団体では、鋭い真剣を用いた一対一の決闘が今日でも行われている点です。立ち位置から一歩も動かず、剣を持つ手と腕だけ動かすという危険に満ちた闘いなのです!
この決闘/Mensur(メンズーア)は、敵対するブルシェンシャフトから一人ずつ選出され、古城の地下にある決闘場などで行われるそうです。スポーツのような勝敗はなく、恐怖心に耐え、己の名誉をかけて闘い抜くことに決闘の意義があるそうで、日本の武士道にも通じる美徳がそこにはあります。
(決闘に関しては京都外語大学の菅野教授が著書『実録 ドイツで決闘した日本人』に詳細な体験記を書かれています。興味深いですよ)

 

文豪ゲーテや哲学者ニーチェ、経済学者マルクスにドイツ帝国宰相ビスマルクもこれらの決闘を経験したとの記録があります。ドイツ国民全体でみると1%にも満たない会員数の学生互助会、ドイツ文化のひとつとして紹介されることはほぼありませんが、複雑な組織体系と思想、そして決闘といった語り尽くせない謎がそこにはあるようです。

 


 

参考文献・HP

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