ドイツの宗教事情 2023 深刻な教会離れ  

 

人と文化に深く根付いている宗教。キリスト教社会であるドイツでは、人口の50パーセント以上がキリスト教徒でしたが(2018年で57パーセント/約4700万人)、近年はキリスト教の脱会(Kirchenaustritt)が急増しており、2021年にはカトリックとプロテスタント、併せて64万人が脱会しており過去最多の脱会者数となりました。

キリスト教の信者数が人口の50パーセント以下を記録したのは約100年ぶりで、ドイツ社会全体への影響も大きいようです。危機的状況にあるドイツのキリスト教事情をお伝えします。

 

 

ローマ・カトリック教会の失墜

 

伝統宗教の衰退はドイツだけでみられる現象ではありませんが、近年のキリスト教脱会の増加に拍車がかかったのは、2018年に発覚したドイツのカトリック教会の聖職者たちによる子どもへの性的虐待が大きな契機となっています。

1945年から2014年の間に3600件以上もの被害があったことが過去の報告書から明らかになり、人々を震撼させました。

そして、これらの虐待事件に対する教会側の対応はさらなる批判を浴びました。

報告書の隠蔽や当該の聖職者への処罰の軽さ、被害者への不十分な対応も含めて、人々は教会に失望し、信頼を失っており、度重なる隠蔽に関しては改善への希望すら持てないというのが人々の心情のようです。

 

2021年、過去最高の脱会者数を記録

 

2021年のカトリック教会脱会者の数は、前年までのほぼ2倍以上となる過去最高の36万人を記録しました。

Kirchenaustritt.deのアンケートによると、脱会の理由の第1位は、教会制度への不満(55.2パーセント)、第2位は教会税を払いたくない(28.7パーセント)、第3位は神への信仰を失ったため(11.8パーセント)となっており、他にも他の信仰を持ったため(1.2パーセント)、その他(2.9パーセント)が挙げられています。

ここで特徴的なのは、2019年までの脱退理由は教会税がトップで40パーセント台を占めていましたが、2020年からは教会への不満が主な理由に逆転している点です。

このことは、度重なる不祥事とモラルの低下、そして教会の隠蔽体質への不満が噴出し、敬虔な信者ほど身を切る想いで信仰を捨てていると分析されています。

また、ここ数年において教会税を理由に脱会している人々も、単に経済的負担を減らすためという理由ではなく、教会税の支払いが腐敗した教会への間接的援助となることを避けるため、そして税金の支払いを辞めることで、教会に対するある種の罰を与えていると考える人もいるようです。

 

改革を求められるカトリック教会 

 

キリスト教の課題は他にも山積しています。

教会内での男女同権や、同性愛者の聖職者への権利、同性婚に対する立場など、現代的な価値観と全くそぐわないキリスト教の制度や価値観をいかに見直していくかが、信者たちからも厳しく問われています。

現代社会における宗教の役割も変化しており、時代と共に教会も変化が求められて久しいです。

 

2019年には人口の53パーセントを占めていたキリスト教信者も、2021年には約49パーセントにまで落ち込んでしまったため、ドイツ社会全体も大きな転機を迎えているのかもしれません。

2022年の脱会者は、前年を上回るとの試算も出されており、21世紀のカトリック教会は改革を余儀なくされる時代に突入しているようです。


参考HP

 

 

 

 

 

 

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