旅先は日本? 増え続けるドイツからの訪日客

 

訪日外国人数が過去最高を更新し続けているのは、もうすっかりおなじみのニュースになりました。

街中を歩けば、さまざまな言語が飛び交っています。

そのなかにドイツ語も混じっているのに気づいたことはあるでしょうか。

2024年の訪日ドイツ人の数は約32万6千人、消費額は1,048億円と、訪日客数、消費額ともに過去最高を記録しています。

でも少し前まで、ドイツで「日本に行ったことある?」と聞いても、ほとんどの人は首を横に振っていました。

アニメに熱中する若者、日本学を専攻する学生、仏教や禅に関心を持つ人—そういった一握りの『日本通』だけが、はるばるやってくる国だった印象ですが、今は「日本に行ってきた」「来年行く予定」という声がずいぶん増えたと聞きます。

数字の変化の裏側に、こうした空気の変化もあります。

 

 

「旅行大国」なのに、日本だけはなぜか後回しだった

 

ドイツは年間延べ約1億人が海外旅行に出かける世界有数の旅行大国です。

しかしその大半はスペイン、イタリア、トルコといった近場の国々に向かいます。

2024年のドイツ人に人気の旅行先も先の三国が上位を占めており、この顔ぶれはここ20年ほぼ変わっていません。

フライト7時間以上のいわゆる「ロングホール旅行」を選ぶドイツ人はわずか8%台。

そのなかでもアジアではタイ、インドネシア、韓国、中国に次ぐ5番手。

日本はアジアの中でも後回しにされがちな存在でした。

2022年の調査では、欧米各国のなかで「アジアで最も行きたい国トップ5」に日本がランクインしなかったのはドイツだけという結果さえありました。

それでも2013年の12万2千人から2024年の32万6千人へと、この10年で2.5倍以上に増えているのは確かです。

SNSやアニメを通じた日本文化への関心と、円安という経済的な後押しが重なり、「いつかは行きたい遠い国」が「今年の夏休みに行く国」へと変わりつつあるのです。

 

 

ドイツ人は日本で何を求めているのか

 

では実際に訪れたドイツ人は、何を目的にやってきたのでしょうか。

日本の観光局が2019年のデータをもとにまとめた資料によると、訪日前に最も期待していたことの1位は「日本食を食べること(84%)」で、実際に体験した97%が満足と答えています。

ただ、これはコロナ前のデータです。

最新のトレンドを見ると、日本食への関心は変わらず高い一方で、「日本庭園や神社仏閣を巡ること」「新幹線に乗って地方を旅すること」「日本の世界遺産を訪れること」といった項目が伸びており、歴史、文化、自然体験への関心がより高まっています。

「日本の歴史・伝統文化体験」や「日本の日常生活体験」への関心は、全訪日外国人の平均と比べて20%以上高いという傾向もあり、テーマパークや買い物よりも「日本らしさを体で感じること」に価値を置いている様子が伝わってきます。

旅の情報源として最も多かったのも「親族・知人からの口コミ(38.2%)」。

すでに訪れた人の言葉が、次のドイツ人旅行者を動かしているのです。

 

こうした旅の深さは、滞在日数にも表れています。

訪日ドイツ人の平均滞在日数は17日前後で、3日以内で帰る人はわずか1%ほど。

移動だけでもまる2日は取られてしまうので、長期滞在を計画するのは当然ともいえますが、そもそもドイツでは法律で年間24日以上の有給休暇が保障されており、まとめて長く休む文化が根づいているのも大きな理由です。

また、1人あたりの消費額は33万2千円と全訪日外国人の平均を10万円以上上回り、しかもその中心は買い物よりも宿泊費と飲食費で、じっくり滞在することにお金を使っています。

リピーター率について言えば、2023年時点でドイツ人訪日客のうち初来日が64%、リピーターが36%と、近隣アジア諸国に比べればまだ低い水準です。

ただ、訪日回数が増えるほど地方へ足を伸ばし消費額も増える傾向があり、ゴールデンルートを外れて日本をさらに深く旅し始めている人が少しずつ増えているようです。

 

世界トップクラスの旅行好き国民の大多数が、まだ日本を訪れたことがありません。

かつては一握りの「日本通」だけが知っていた国が、口コミで少しずつ、でも確実にドイツ人の旅の地図に描き込まれていく。

その変化は、数字よりもずっと静かに、でも着実に進んでいます。

駅のホームや旅館の廊下でドイツ語が聞こえてきたら、その人はきっと誰かの「日本、最高だったよ」という一言に背中を押されてやってきたのかもしれません。

 

 


参考HP

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