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目次
スイスを訪れる際、チューリッヒ国際空港またはチューリッヒ中央駅を玄関口にしてスイス観光をスタートする方も多いことから、スイスで最も認知度の高い都市であると言えます。それ故、チューリッヒをスイスの首都であると勘違いされている方も少なくはありません。確かに、チューリッヒはスイスで最大の人口を誇り、スイス経済の中心なのですが、複数の大使館や領事館の所在地になっていることを除けば、政治面においてさほど重要な役割を果たしていません。したがって、今回は「ハロ~・チューリッヒ」のCMでもお馴染みの都市チューリッヒをご紹介させていただきます。

自由主義の経済都市
チューリッヒの歴史は古く、古代ローマ帝国がチューリッヒ湖の北岸に「トゥリクム」(Turicum)と呼ばれる拠点を建てたことが起源とされています。その頃、リマト川(Limmat)を行き来する船から通行料を徴収する関所が置かれ、アルプスを南北に横断する際の重要な宿場町であったこともあり、チューリッヒは商業都市および流通の要所として栄えました。また、1262年には神聖ローマ帝国の帝国直轄領となり、「帝国自由都市」(freie Reichsstadt)の地位が与えられます。また、同様な立場にあったウーリ、シュヴィーツ、ウンターヴァルデンの3州がハプスブルク家に対抗して独立を果たしたことに影響を受け、1351年に5番目の州としてスイス連邦、即ちアイトゲノッセンシャフトに加盟します。さらに、チューリッヒは1336年にギルド革命(Zunftrevolution)を起こし、職人達を中心とした市の政治体制を持っていたことや1519年にフルドリッヒ・ツヴィングリ(Huldrych Zwingli)の宗教改革(Reformation)によってプロテスタントの都になったことでも有名で、産業革命においても金融機関の設立等によって徐々に世界的な経済の拠点となり、常に自由主義の先駆者でもありました。毎年、春に開催されるお祭り「ゼクセロイテン」(Sechseläuten)で披露されるギルドによるパレードはチューリッヒが職人中心の町であったことを現代にも色濃く伝えていますし、さいとうたかを先生の名作「ゴルゴ13」にも登場する「スイス銀行の隠し口座」という設定は金融都市チューリッヒからくるイメージがその背景にあります。

チューリッヒの旧市街にはこのようなギルド関連の建造物が数多く点在します
文化・芸術の発信地
リマト川の両岸に広がる旧市街を散策すると中世に建てられた建造物からモダンな建築物が立ち並び、チューリッヒが古い歴史を持ちながらも近代的な経済都市であり、新旧を上手く融合していることが伺えます。しかし、チューリッヒは同時に文化や芸術の中心地としての一面も持っているのです。スイス国立博物館であるランデスムゼーウム(Landesmuseum)やオペラハウスを始め、市内には数々の劇場、ライブハウス、ならびに美術館があり、中には市立リートベルク美術館のようにアジアの美術を専門に取り扱うというようなスイスでは極めてマイナーな分野に特化したものも少なくはありません。また、1910年代に起こった芸術運動ダダイズムも実はチューリッヒのキャバレー・ヴォルテール(Cabaret Voltaire)を活動拠点にし、そこから世界中に広がったのです。このように、チューリッヒは常に文化や芸術を積極的に発信してきました。

スイス最大の学園都市
そして、忘れてはいけないのはチューリッヒが学園都市でもあることです。あのアインシュタインが教員を務めたことでも有名なリマト川東岸の丘に聳えるチューリッヒ連邦工科大学(Eidgenössische Technische Hochschule Zürich)およびチューリッヒ大学(Universität Zürich)はスイスで最も生徒数の多い2校で、両校の合計生徒数は48,000人以上です(2019/2020年現在)。それに加えて市内の専門学校や音楽・芸術大学も含めれば、スイスの大学生の3人に1人がチューリッヒの学校に通っていることになります。また、連邦工科大学に関しては各種世界大学ランキングでも常に上位に挙がっており2、その実力は正に世界レベルと言っても過言ではありません。そのため、チューリッヒ市内では至る所で大学生を目にするだけでなく、世界各国からの留学生に会うことも決して珍しくはありません。

さて、今回はスイス最大の都市チューリッヒについてご説明させていただきましたが、人口が多いだけでなく、いろいろな顔を持っている国際都市であることをご理解いただけたでしょうか?しかし、今回ご紹介できたのはほんの一部に過ぎず、チューリッヒの魅力はまだまだこんなものではありません。例えば、物価の高さでも常に世界ランクの上位を占めており、観光地としての魅力も持っていることに関しましては全く触れていませんので、そういった点も踏まえ、皆様には是非一度ご自身の足でチューリッヒを訪問し、新たな一面を発見してほしいと願っています。
では
Bis zum nöchschte mal!
Birewegge
今回の対訳用語集
| 日本語 | 標準ドイツ語 | スイスドイツ語 | 
| 人口 | Bevölkerungszahl (ベフェルケルングスツァール) | Bevölkerigszahl (ベフェルケリクスツァール) | 
| 関所 | Grenzposten (グレンツポステン) | Gränzposchte (グレンツポシュテ) | 
| カフェ | Café (カフェー) | Kafi (カフィ) | 
| オペラハウス | Opernhaus (オーペアンハウス) | Operehuus (オーペレフース) | 
| 学園都市 | Studentenstadt (シュトゥデンテンシュタット) | Schtudänteschtatt (シュトゥデンテシュタット) | 
| 東岸 | Ostufer (オストウーファー) | Oschtuufer (オシュトウーフェル) | 
| 専門学校 | Fachhochschule (ファッハホーホシューレ) | Fachhochschuel (ファッハホーホシュエル) | 
| 上位 | Obere Plätze (オーベレ・プレッツェ) | Obere Plätz (オーベレ・プレッツ) | 
| 留学生 | Austauschstudent (アウスタウシュシュトゥデント) | Uustuuschschtudänt (ウーストゥーシュシュトゥデント) | 
| 観光地 | Touristenort (トゥーリステンオアト) | Turischtäort (トゥリシュテオルト) | 
参考ホームページ

スイス生まれスイス育ち。チューリッヒ大学卒業後、日本を訪れた際に心を打たれ、日本に移住。趣味は観光地巡りとグルメツアー。好きな食べ物はラーメンとスイーツ。「ちょっと知りたいスイス」のブログを担当することになり、スイスの魅力をお伝えできればと思っておりますので皆様のご感想やご意見などをいただければ嬉しいです。

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