チョコレート大国スイス

皆様はスイスの特産品と言えば何を思い浮かべますか?私の経験上、この質問に対して日本人の多くは時計と回答しますが、それ以外の国ではスイスの特産品として最初に挙げられるのがチョコレートだそうです。私もその点につきましてはスイス人として「なるほどね」と思うほど納得しますし、日本での生活で一番恋しくなるのもやっぱりスイスチョコです。その年間輸出量からベルギーがチョコレートの国と思われがちですが、実はスイスがそれ以上のチョコ大国であることをご理解していただくためにも、今回はスイスチョコについてご紹介させていただきたいと思います。

 チョコレート業界に革命を引き起こしたスイスの職人達

 

チョコレートはその名前がマヤ語に由来することからも分かるように、元々は中米で生まれ、16世紀にヨーロッパに伝わったとされています。その後、各国でチョコレートが製造されるようになりますが、18世紀後半になると、スイスのチョコレートが世界的に有名になり始めます。その背景にはそれまで美味しいと認識されることなく、むしろ医薬品であったチョコレートを誰しもが好きになるお菓子へと発展させたスイスのチョコレート職人による数々の偉業があります。まず、1826年に菓子製造会社「ショコラ・シュシャール」(Chocolat Suchard)の創設者であるフィリップ・シュシャール(Philippe Suchard)がココアパウダーと砂糖を混ぜる機械「メランジュール」を発明したことでチョコレート製造に革命を引き起こします。メランジュールによって原材料を混ぜる作業の効率化に繋がり、大量生産を可能にしたのですが、完成品は何れも脆く、味も苦く、砂のような食感だったと言われています。そこで、チョコレートメーカー「リンツ」(Lindt)の創業者であるロドルフ・リンツ(Rodolphe Lindt)が改良に改良を重ね、1879年にチョコレート専用撹拌機の「コンチェ」を開発したのです。コンチェはとてもクリーミーな食感と滑らかな舌触りのチョコレートを作り上げるだけでなく、長時間にわたって材料を撹拌するため、苦味も徐々に減らしてほんのりと甘い香りに仕上げてくれる画期的な発明でした。そして、ほぼ同時期にチョコレート職人のシャルル=アメデー・コーラー(Charles-Amédée Kohler)がヘーゼルナッツチョコレートを生み出し、ダニエル・ペーター(Daniel Peter)がココアパウダーと砂糖に練乳を混ぜたミルクチョコレートの開発に成功します。これらの製造技術と品質の向上、および食感と味の改善によってスイスのチョコレートは飛ぶように売れて、スイスを代表する特産品にまでなったのです。

スイスでチョコは身近な存在

 

このようにスイスはチョコレート史における先駆者としてその発展に大きく貢献してきましたが、実は現在もチョコレート業界をリードしていると言っても過言ではありません。それは、チョコレートがスイス人の日常生活における様々な場面で欠かさず登場することでも確認できます。例えば、スイスでスーパーに行っても必ずチョコレート専用の商品棚があり、板チョコだけでもミルクチョコ、ヘーゼルナッツチョコ、アーモンドチョコ、ホワイトチョコ、ダークチョコなど数十種類が売られています。さらに、その隣にはその他のチョコレート菓子、インスタントチョコレートドリンクやパンなどに塗るスプレッド等の関連製品もずらりと並んでいます。街角の小さな売店やお土産店だろうが、駅のキオスクだろうが、チョコは絶対に販売されていて、スイスでチョコレートを探すのに苦労することなんてまずありません。しかも、一般的に売られているそれらの商品は日本のように大手製菓企業のものではなく、大半はチョコを専門に扱うチョコレート製造業者の製品なので、スイスでチョコが個別の食料品分野を成していて、独自の大規模市場が存在していることを物語っています。そして、日本の一般家庭の冷蔵庫にしょう油が入っているように、スイスの家には絶対と言っていいほどチョコレートがあります。また、皆様は甘い物が欲しくなった際にケーキにしようかクッキーにしようか、はたまた和菓子にするか悩みますよね?しかし、スイス人ならまずチョコを有力候補として選択肢に加えます。そのため、スイスで1人当たりのチョコレート年間消費量も約10キロ前後で、国際比較で常にドイツと首位争いをするほど多いのです1

スイスチョコレート専門店「リンツ」の板チョコレートレパートリー
スイスチョコレート専門店「リンツ」の板チョコレートレパートリー

高級ファッションブランドと肩を並べるスイスのショコラティエ

 

また、チョコレート製造業者による市販のチョコレートとは別に、いわゆる生チョコと呼ばれるプラリネ・トリュフ・ヌガーなどのお菓子や創作品を手作りで手掛ける専門菓子職人ショコラティエがいることはご存知ですよね?日本では特に辻口シェフでもお馴染みの辻口博啓さんを初め、ショコラティエの世界大会であるワールド・チョコレート・マスターズでチャンピオンに輝いた水野直巳さんや平井茂雄さんが知られていますが、もちろんスイスにも数々のショコラティエがいます。しかも、上記でご説明したように、古くからチョコレート業界をリードしてきたため、中には創業から200年近く続く老舗もあり、チョコ以外のさまざまなスイーツの販売も行い、イートインスペースとしてカフェを併設し、他社と業務提携して幅広く活動しているショコラティエも少なくありません。そのため、「トイシャー」(Teuscher)、「レダラッハ」(Läderach)、シュプリュングリ(Sprüngli)、「リンツ」(Lindt)などのように、大半は個人名ではなく屋号を用いているのが特徴的です。そして、スイスのショコラティエと他国のショコラティエが大きく異なる点はなんと言ってもそのステータスです。例えば、チューリッヒ最大の繁華街であるバーンホフ通り(Bahnhofstrasse)には錚々たるショコラティエのお店が大手金融機関を始め、ファッションブランド、時計、ならびにジュエリーの高級店と並んでいます。これは日本に例えると、チョコレート職人が銀座2丁目の中央通り沿いや大阪心斎橋の御堂筋にお店を構えて集結しているような状況で、想像もつかないのではないでしょうか?それ故、スイスのショコラティエはシャネルやヴィトンのように認知度が高く、それらの名前を知らない人はいないほどです。

チューリッヒのバーンホフ通りにある老舗ショコラティエ店「トイシャー」 (隣にはバーバリーとウブロ、向かいにはカルティエのお店が建っています)
チューリッヒのバーンホフ通りにある老舗ショコラティエ店「トイシャー」 (隣にはバーバリーとウブロ、向かいにはカルティエのお店が建っています)

チョコレートに関するご紹介はお気に召していただけたでしょうか?今回は主にスイスとチョコの関係についてのお話をさせていただきましたが、チョコレートはやっぱり食べてなんぼですので、皆様にもスイスチョコを食べていただければと思います。種類が非常に豊富なため、味も甘いものからほろ苦いのまで様々ですが、スイスチョコはどれを食べても外れがないと断言できます。むしろ、虜になる可能性が高いので、食べすぎなどに注意する必要があるくらいです。しかも、スイスチョコは現地でなくても、日本の百貨店や商業施設にも店舗があったり、バレンタインシーズンなどで一時的に出店していたりしますので、お近くでお求めいただけます。スイスチョコは必ず皆様のチョコレートに関する視野を広げ、価値観を変えてくれると確信を持って言えますので、損をしないためにも是非一度を食べてみてください。

では

Bis zum nöchschte mal!

Birewegge

1出典:Statista.com


今回の対訳用語集

 

日本語 標準ドイツ語 スイスドイツ語
チョコレート Schokolade

(ショコラーデ)

Schoggi

(ショッギ)

美味しい lecker

(レッカー)

fein

(ファイン)

お菓子 Süßigkeit

(シュースィヒカイト)

Süessigkeit

(シュエッスィグカイト)

板チョコ Tafelschokolade

(ターフェルショコラーデ)

Tafelschoggi

(タフルショッギ)

販売する verkaufen

(フェアカウフェン)

verchaufe

(フェルハウフェ)

ケーキ Kuchen

(クーヘン)

Chueche

(フエへ)

クッキー Kekse

(ケクセ)

Guezli

(グエツリ)

冷蔵庫 Kühlschrank

(キュールシュランク)

Chüelschrank

(ヒュエルシュランク)

選択肢 Auswahl

(アウスヴァール)

Uuswahl

(ウースヴァール)

数々の zahlreiche

(ツァールライヒェ)

zahlriichi

(ツァールリーヒ)

 

参考ホームページ

 

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