Eis, zwei, drü! スイスドイツ語講座その4:数字

皆様、こんにちは!過去に、ドイツ語とスイスドイツ語は発音だけでなく、言い回しに関しても異なる点が多いことに何度か触れてきましたが、各記事の対訳用語集にもご注目されていた方は一定のパターンが見えてきたのではないでしょうか?

しかし、例外が非常に多いドイツ語ですので、スイスドイツ語にもなかなか慣れないと悩む人も多いと思います。

したがって、今回は日常生活で使うことが多いだけでなく、ドイツ語とスイスドイツ語の違いが最も分かりやすい数字の発音についてご説明いたします。

 

 同じようで微妙に違うドイツとスイスにおける数字の発音

 

皆様は「クール・ランニング」(Cool Runnings)という1990年代の映画をご存知ですか?

冬を知らない南国のジャマイカ人がバカにされながらもボブスレーチームを結成してカルガリーの冬季オリンピックに出場した実話を基にしたハリウッドのコメディ映画です。

その中で、ジャマイカチームは極寒のカルガリーに到着して雪というものに初めて遭遇することから、氷の上でどのように動けばいいのか分からないので、強豪国スイスをお手本にします。

そのような経緯からジャマイカチームはボブスレーのスタートダッシュで「アイン、ツバイ、ドライ!」(Ein, zwei, drei)の掛け声で息を合わせます。

これは日本語の吹き替え版だけでなく、アメリカのオリジナル版でも同様ですが、ドイツ語吹き替え版ではなんと「エイス、ツヴェイ、ドリュー」(Eis, zwöi, drü)となっているのです。

この違いはいったいどういうことなのでしょう?

既にお気付きの方もいると思いますが、英語版と日本語版でスイスチームが喋っているのはドイツ語で、ドイツ語版ではそれがスイスドイツ語に置き換えられたのです。

皆様の中には「そのような必要があるほど違うの?」、と、疑問を抱く人もいると考えますが、これはとても重要なポイントなのです。

スイス人も標準ドイツ語を喋ることはありますが、スイスのオリンピック選手がルーティンとも言える掛け声で標準ドイツ語を使うのは極めて不自然で、信憑性にも欠けています。

これは青森のリンゴ農家を題材にした作品で誰も津軽弁を話さないのと同じで、違和感しか残りませんよね?

 

数字の基本

 

では、ドイツ語とスイスドイツ語では数字の発音がどれほど違うのかを見ていきましょう。

因みに、先ほど申し上げた「エイス、ツヴェイ、ドリュー」は、ドイツ語版クール・ランニングでギャグ要素を取り入れる目的もあったせいか、ベルン方言など西スイスで主流の発音になっており、スイスの大半の地域の発音とは少々異なります。

したがって、皆様にはより一般的なスイスドイツ語での数字をご紹介いたします。

既にご存知だと思いますが欧米言語では日本語と違って1から12までの数字と20、30、40などの概数が単独の名称を持っており、それ以外の数字はそれらを複合して構成されます。

これはドイツ語ないしはスイスドイツ語でも全く同じです。そして、2に相当する「ツヴァイ」で既に見られたように、両者で発音が同一のものもございますが、これらはどちらかと言うと稀で、大半の数字では発音に違いがあります。

そこで、まずは両言語における単独名称を持つ数字のそれぞれの発音を分かりやすく説明するため、それらを以下の表にまとめさせていただきましたのでご参照ください。

ドイツ語 スイスドイツ語
1 eins(アインス) eis(アイス)
2 zwei(ツヴァイ) zwei(ツヴァイ)
3 drei(ドライ) drü(ドリュー)
4 vier(フィアー) vier(フィエル)
5 fünf(フュンフ) füf(フューフ)
6 sechs(ゼクス) sächs(セフス)
7 sieben(ズィーベン) sibe(スィベ)
8 acht(アハト) acht(アフト)
9 neun(ノイン) nün(ニューン)
10 zehn(ツェーン) zäh(ツェー)
11 elf(エルフ) elf(エルフ)
12 zwölf(ツヴェルフ) zwölf(ツヴェルフ)
20 zwanzig(ツヴァンツィヒ) zwänzg(ツヴェンツク)
30 dreißig(ドライッスィヒ) driissg(ドリーッスク)
40 vierzig(フィアツィヒ) vierzg(フィエルツク)
50 fünfzig(フュンフツィヒ) füfzg(フュフツク)
60 sechzig(ゼヒツィヒ) sächzg(セフツク)
70 siebzig(ズィプツィヒ) sibezg(スィベツク)
80 achtzig(アハツィヒ) achzg(アフツク)
90 neunzig(ノインツィヒ) nünzg(ニュンツク)
100 hundert(フンダート) hundert(フンデルト)
1000 tausend(タウゼント) tuusig(トゥースィク)

 複合数字の特徴

 

次に複合数字も詳しく見てみましょう。ドイツ語を学んでいる方であれば、13から99までの数字を言う場合に必ず一の単位が最初にきて、その次に十の単位が並び、21以上はそれらの間に(und)が入ることを知っていますよね?

即ち、15は「フュンフツェーン」(fünfzehn)で、63は「ドライウントゼヒツィヒ」(dreiundsechzig)と言います。

また、100以上の数字に関しては、1の単位を100の前に置くことでその倍数を表してから、その後の2桁を同様に繋ぎます。

例えば、372は3×100に72ですので「ドライフンダートツヴァイウントズィプツィヒ」(dreihundertzweiundsiebzig)になり、7618でも7×1000に6×100と18で「ズィーベンタウゼントゼクスフンダートアハトツェーン」(siebenausendsechshundertachtzehn)なのです。

複合の方法に関してはスイスドイツ語も全く同じルールに従いますが、間に挟む「ウント」が「エ」(ä)に変わるのが大きな違いです。

つまり、例として挙げた上記の数字で言うと15は「フュフツェー」(füfzäh)、63は「ドリューエセフツク」(drüäsächzg)、372は「ドリューフンデルトツヴァイエスィベツク」(drühundertzweiäsibezg)、そして7618は「スィベトゥースィクセフスフンデルトアフトツェー」(sibetuusigsächshundertachtzäh)です。

前出の表を再度ご確認していただければ分かりますが、ドイツ語とスイスドイツ語では発音のみが異なり、数字そのものとそれらを組み合わせて複合数字を完成させる方法は同一なのです。

 

例外に注意!

 

さて、数字を一通り学んだところで注意しなくてはならないのが、数字の中にはいくつかの例外があることです。

まず、単独数字の1は既に申し上げたように、ドイツ語で「アインス」で、スイスドイツ語で「アイス」と発音します。

ただし、これを複合する際は語尾の「ス」に当たる「s」が省略され、どちらの言語でも「アイン」となります。

例えば、31だとドイツでは「アインウントドライッスィヒ」(einunddreißig)、そしてスイスドイツ語でも同様に「アインエドリーッスク」(einädriissg)と言います。

この例外は両言語で共通しておりますので、比較的覚えやすいのですが、厄介なのはドイツ語が通常通りのルールになっているにもかかわらず、スイスドイツ語のみにおいて例外が見られる場合です。

ご説明したパターンで行きますと、ドイツ語で「ドライツェーン」(dreizehn)を指す13はスイスドイツ語でも同様に「ドリューツェー」(drüzäh)になる筈ですよね?

しかし、スイスドイツ語で13だけは単独数字の3の言い方が「ドリュー」から「ドリ」に変わって、「ドリツェー」(drizäh)と発音するのが正解なのです。

また、7に関しても単独数字の「スィベ」(sibe)ですが、それで複合数字を作る時は間に入る「エ」との関係で二重母音が発生し、それを回避するために37を指す「スィベドリーッスク」(sibedriissg)などのように「エ」を「ネ」(nä)に置き換えるのが一般的です。

全く同じ理由で「アフツク」(achzg)が付く81~89の数字についても「エ」を「エド」(äd)に変更し、84を「フィエルエドアフツク」(vierädachzg)と発音して二重母音を避けます。

 

以上で数字に関するご説明は終了ですが如何でしたか?

この記事を読んで数字に関する詳細を初めて知った方は頭が混乱していると思いますが、仕組みを理解して慣れていけばさほど難しいものではありませんので頑張って覚えましょう。

また、今回はいつもと比べてスイスドイツ語の単語が多かったので、いつも記事の最後に挙げている対訳用語集を省略させていただきたいと思います。

その代わり、今回のスイスドイツ語講座の内容を正しく理解できたかをご自身でチェックするための練習問題を追加させていただきました。

当分の間、数字には関わりたくないと感じている人もいるかもしれませんが、気が向いた時でいいので是非挑戦してみてください。

では

Bis zum nöchschte mal!

Birewegge


練習問題

以下のスイスにまつわる数字をスイスドイツ語で答えてください。正解はマウスオーバーで確認できます。

  • 第1問:スイス連邦を構成する州の数「26」
  • 第2問:スイスの国会議員の数「246」
  • 第3問:アイトゲノッセンシャフトが誕生した年「1291」
  • 第4問:メートル表記でのマッターホルンの標高「4478」
  • おまけ:「999,999」

正解はこちら

 

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