泡まみれの食器たち

 

文化は、生活様式のなかに深く根ざしています。だからこそ異文化と触れあう中で、当たり前だと思っていた習慣の違いに、しばしば驚くことがあると思います。全く予想もできないやり方に遭遇したことはありませんか?国をまたがずとも、日本国内でも地域による文化の違いはありますし、個々の家庭間でも習慣の違いはあります。でも、これからお伝えするドイツの習慣は日本ではなかなか見受けられないのではないでしょうか。今回はキッチンで起こるカルチャーショックについてお話しします。

 

 

食器はすすがない!?

 

ドイツ人家庭で、もしくはドイツ人と一緒に生活をしたことはありますか?

大きなキッチンに、大きなお皿。でも意外と小さい冷蔵庫。。日本との違いは色々ありますが、食器の洗い方の違いには、びっくりさせられたことがあります。食べ終わった食器を洗う際に、食器用洗剤をいれた水にじゃぽんとつけて、汚れが落ちたら、すすがずにザルにあげ、あとはふきんで泡を拭き取るのです。この方法は、実際にはドイツだけでなく、イギリス、アメリカ、オーストラリアなど多くの欧米社会でみられるようです。

『どうしたらそういうやり方をする発想がでてくるんだろう?』、『反対に、わたしたちがしているやり方もどうしてこれが定番となったんだろう?』『普通ってなんだろう?』これぞカルチャーショックの神髄ですよね。

 

ドイツ国内でも賛否両論

 

でも、このやり方もどうやら賛否両論あるようで、洗剤をすすぐ派、すすがなくても平気派に分かれるようです。

インターネットで検索してみるとこのテーマの議論やコラムが数々ヒットします。例えばあるサイトでは、Muss man Geschirr klarspülen?(食器はきれいにすすがなきゃいけないの?)というタイトルでその正当性を吟味しています。少々古い記事になりますが、ドイツの由緒正しき新聞、die Zeitのオンライン記事では、Spülmittelというタイトルのコラムが載っており、しばしば学生同士のシェアハウスで起こるこの論争について、食器用洗剤の安全性の観点から考察されています。でも、、、日本人からしてみると『えーと、まず議論になること自体不思議・・・だって洗って当然じゃない?』というのが正直な気持ちではないでしょうか。

 

環境的な違い

 

でも、一概に奇異な目でみることはできません。この背景には、ドイツと日本の水質、洗剤の種類による成分の違い、湿度、さらには清潔さへの意識の違いなどがあるようです。島国であり、水の潤沢な日本と、大半が内陸であるドイツでは、そもそも水の貴重さが違いますし、水道代も高いので経済的理由が大きいようです。泡を落とさずふきとれば、水道代の節約になります。また一説では、14世紀のペストの流行によって人口の三分の一から二を失った歴史のあるヨーロッパ諸国では、殺菌成分があることをよしとする傾向があるため、薬品への抵抗感が少ないのではという意見もあります。

我々の『当たり前』を支えているものは、育ってきた場所の固有の歴史や、環境に基づいているということを、異文化に接することで、今一度見つめ直すことができますね。

 


参考HP

Comments

(2 Comments)

  • なめ

    いまは議論になっているだけでマシですね。学生寮で暮らしはじめたころ「すすごうよ」と言っても、誰一人なに言ってるのか理解してもらえませんでした。
    リンク読みましたけど、界面活性剤を少しくらい摂取しても問題なしが結論なんですね。6年(後半はDDRで)暮らしても体調をくずしたりしなかったから、正しいのかもしれませんけど。ぜったい納得できません。

    • HH

      コメントありがとうございます。
      お皿をすすがない文化は、頭では分かっていてもなかなか受け入れられない習慣ですよね。
      見ていないところでこっそり二度洗い…したことがあるような記憶があります。

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