Grüezi! スイスドイツ語講座その1:挨拶

皆様、こんにちは!この度、本ブログの「ちょっと知りたいスイス」コーナーを担当することになりましたBireweggeです。

スイス生まれスイス育ち。チューリッヒ大学卒業後、日本を訪れた際に心を打たれ、日本に移住。趣味は観光地巡りとグルメツアー。好きな食べ物はラーメンとスイーツ。

「ちょっと知りたいスイス」のブログを担当することになり、今までと同様に、スイスの名所や名物、ならびにスイスに関する小ネタをご紹介させていただきますので、どうぞよろしくお願いいたします。

さて、今回は記念すべき第1回目ということもあり、どのようなテーマにしようかと悩みましたが、スイスの文化を根本から知る上でも最も重要であると考えるスイスドイツ語、即ちSchwiizertüütschを紹介する内容にすることにしました。

ネット社会と呼ばれるこのご時世、スイスに関する情報を得る手段は山ほどありますが、スイスドイツ語について調べる情報源は意外と多くはありません。これは全ての言語に共通することですが、講師などによる解説がない状況で独学のみでその言語を学んでもなかなか身に付かないのが現実です。そこで、本ブログではスイスについての話題をご紹介すると同時に、皆様がスイスドイツ語に関する知識も習得できるようにしていきたいと考えておりますので、今後もお付き合いいただければ幸いです。

スイスで最も一般的な挨拶は「Grüezi」と「Hoi
どの言語でも会話を始める上で最も重要なのはやはり挨拶です。既にご存じの方も多いと思いますが、ドイツ語で「こんにちは」は「グーテン・ターク」(Guten Tag)で、スイスドイツ語では「グエテ・ターク」(Guete Tag)と言います。

ただし、ドイツと違ってスイスでは「グエテ・ターク」(Guete Tag)を挨拶する際に使用することは稀で、より一般的に使用されるのが「グリュエツィ」(Grüezi)なのです。

これはドイツ語圏の中でもスイスでのみ使用される挨拶で、スイスを訪れる外国人もその言葉を頻繁に耳にするあまり、つい覚えてしまい、スイスドイツ語を象徴する代名詞にもなっています。また、ドイツ語ではお互いが親しい中であれば「ハロー」(Hallo)や英語風に「ハイ」(Hi)と言いますが、これらはスイスドイツ語では全くと言っていいほど使用されず、その代わりに「ホイ」(Hoi)もしくは「サリ」(Sali)と言うのが一般的です。

挨拶の際は相手のご機嫌も伺うことを忘れずに!

 

挨拶で使う言葉を挙げたところで、1点ご注意していただいきたい点があります。

全ての言語において挨拶は「こんにちは」だけではなく、「お変わりないですか?」や「お元気ですか?」などと一言添えるのが基本ですよね?これは会話をする上でも非常に重要で、「こんにちは」のみで挨拶を終わらせると、相手も「こんにちは」と返し、その時点で会話は終了となります。したがって、挨拶は「こんにちは、お元気ですか?」という風に使って初めて完成するのです。

ドイツ語であれば「Guten Tag, wie geht es Ihnen?」と言い、スイスドイツ語であれば「Grüezi, wiä gahts ine?」と言います。

また、この質問に対する返事はドイツ語で「Danke, mir geht es gut. Und Ihnen?」であるようにスイスドイツ語でも「Dankä, mier gahts guet. Und ine?」です。

返事が少々長いように思えますが、これは他の言語でも共通で、「お元気ですか?」と聞かれる際、自身の具合や体調を気にかけてくれたことに対する感謝の言葉を述べ、「元気です」と回答し、さらに相手の具合も伺うことを含むからです。

国によっては表現が異なることもありますが、日本語でも「元気です。どうもありがとうございます。あなたも元気そうですね?」などと言い、より丁寧な挨拶には感謝の言葉と同じ質問を相手にも返すことは欠かせません。

その後、会話のキャッチボールは再び相手に戻り、ドイツ語なら「Mir auch, danke.」で、スイスドイツ語なら「Mier au, danke.」、即ち「私も元気です。ありがとうございます。」と返して挨拶が終わります。このように、挨拶が単なる掛け言葉ではなく、実は会話のキャッチボールを構成するひとつの要素であることを覚えておいてください。

 

ご機嫌を伺うのは親しい相手に対しても同じ!

 

上記の説明を読み、久しぶりにお会いした恩師に対してならわかるが、親しい仲であれば「お元気ですか?」の気遣いは流石にやりすぎでは、と感じていらっしゃる方もいるのではないでしょうか?

しかし、スイスではそれは大きな勘違いです。むしろ、親しい中であるからこそ相手の事を気遣い、元気で過ごしているかを伺うべきであり、相手も大切に思われたいものなのです。そのため、友人に対して「こんにちは!」や「久しぶり!」のみで挨拶を終わらせると、いきなり「因みに元気だよ!」などと聞き忘れを指摘されることも決して稀ではありません。

したがって、友達や親族に対しても他人と同様に「元気かい?」と聞いて、ご機嫌を伺うようにしましょう。

その場合の言い方は上記で述べた通りと全く同じですが、丁寧語の「あなた」を意味するドイツ語の「Ihnen」またはスイスドイツ語の「ine」を「君」を指す「dir」に置き換える必要があります。今までご説明した挨拶の流れをまとめますと、具体的に以下の通りになります:

他人や目上の人の場合: 親しい人同士の場合:
「Grüezi, wiä gahts ine?」 「Hoi, wiä gahts dir?」
「Dankä, mier gahts guet. Und ine?」 「Dankä, mier gahts guet. Und dir?」
「Mier au, danke.」 「Mier au, danke.」

このように、スイスドイツ語での挨拶をご紹介させていただきましたが如何でしたか?もちろん、日本で生活していれば「Grüezi!」を使う機会がなかなかないと思いますが、日本に観光で訪れたスイス人に出会った際や、ご自身がスイスを訪れることがあれば、是非一度スイスドイツ語で挨拶してみてください。
では

Bis zum nöchschte mal!
Birewegge

今回の対訳用語集

 

日本語 標準ドイツ語 スイスドイツ語
スイスドイツ語 Schweizerdeutsch

(シュヴァイツァードイチュ)

Schwiizertüütsch

(シュヴィーツェルトューチュ)

挨拶 Begrüßung

(ベグリューッスング)

Begrüessig

(ベグリュエッシク)

こんにちは Guten Tag

(グーテン・ターク)

Guete Tag

(グエテ・ターク)

お元気ですか? Wie geht es Ihnen?

(ヴィー・ゲート・エス・イーネン)

Wiä gahts ine?

(ヴィエ・ガーツ・イネ)

元気かい? Wie geht es Dir?

(ヴィー・ゲート・エス・ディアー)

Wiä gahts diär?

(ヴィエ・ガーツ・ディエル)

元気です。 Mir geht es gut.

(ミアー・ゲート・エス・グート)

Mier gahts guet.

(ミエル・ガーツ・グエト)

私も(元気です) Mir auch

(ミアー・アウフ)

Mier au

(ミエル・アウ)

ご機嫌 Laune

(ラウネ)

Luune

(ルーネ)

会話 Gespräch

(ゲシュプレーヒ)

Gschpröch

(グシュプレーヒ)

友人 Freund

(フロイント)

Fründ

(フリュント)


参考ホームページ

 

スイス方言辞典:「Grüezi」


スイスドイツ語の対訳用語集を公開中

これまでブログ内でご紹介した「日本語・標準ドイツ語・スイスドイツ語の対訳用語集」をまとめています。

スイスドイツ語に興味がある方はぜひ下記よりご覧ください!!

*スイスドイツ語対訳用語集* – トランスユーロアカデミー (trans-euro.jp)

 

Comments

(5 Comments)

  • Yurika

    こんにちは😃 とても興味深く読ませていただきました。
    実は、友人からUrsula Meier-Nobsの本が何冊か送られてきて、ドイツ語と思って開いてみたら、なんと謎のような言葉が連なっていて、え、私、ドイツ語に自信があるわけじゃないけど、子どもの本まで読めなくなっちゃったの?とあせりました。Wikipediaで見てみたら、著者はベルン出身の方のようなので、もしやこれはスイスのドイツ語?スイスのドイツ語って、ドイツ語と違うの? しかも本になるような書き言葉でも違うの? 子供向けだから?と、たくさんの???をいだいて、このブログにたどり着きました。そうだとすると、対象はスイスのドイツ語圏の子どもだけ?それだとマーケットが狭すぎると思うのですが。おいそがしいでしょうけど、私の疑問に答えていただけたら嬉しいです。

    • Birewegge

      コメント、どうもありがとうございます。ご察しの通り Ursula Meier-Nobsはスイスドイツ語の著書を多く残している、通称「方言作家」(Mundartschriftsteller)と呼ばれている作家のひとりです。実は、彼女のようなスイスドイツ語を使用した作品に拘る人物は作家のみならず、芸人や歌手にもいます。単純に売り上げや発行部数を考えますと、マーケットが狭すぎますが、彼女のような作家にとって最も重要なのは文化の継承なのです。限られた地域と人物を対象にしていますが、スイスドイツ語文学はさほど知られていなくても独立した文学部類です。そのような文化を絶やさず、次世代に伝えるため、現在も多くの人物が詩・絵本・小説など様々な形状でこのニッチな分野で活躍されておられます。私自身の中学時代の国語の先生もそのひとりで、現在もエントレブーフ方言を使用した小説を書き続けておられますし、SNSで度々新作に関する広告を送付してくれます。ちなみに、このスイスの「方言文学」は言語がスイスドイツ語になっているだけでなく、実際の内容もスイスの文化や風習に関するものになっています。つまり、無理にスイスドイツ語を取り入れてる訳ではなく、その内容に最も適した言語として地元の方言を使用しているということです。今回、コメントを寄せていただく理由になった作品がどのようなものか知りませんが、ベルン地方に関する独特な内容になっていませんか?したがって、今回入手された絵本は世界的なヒット商品ではありませんが、限られた数しか存在しないスイス文学(文化)の貴重な遺産です。日本に例えると「琉球文学」や「アイヌ文学」に近いと言えばご理解いただけるのではないでしょうか?それらにおいても売り上げではなく、消えつつある文化の存続のためにご活躍されている方々が殆どだと存じます。今回、このようなレアな代物でスイスドイツ語にもご興味を持っていただければと思います。しかし、いきなり難易度の高い作品でスイスドイツ語に挑戦しても挫折すると思いますので、徐々にスイスドイツ語に慣れていってみては如何でしょう?

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  • Kuri

    ありがとうございます。ドイツ語(バイエルン)は少し勉強していて話せますが、スイスで話す言葉と違うと知って愕然。
    とても勉強になりました。
    ぜひ継続してください。
    ちょっと気になるのはスイスの会社でドイツ名でない人がいます。会社の場所はスイスドイツ語圏です。そこでスイスドイツ語であいさつをしても不愉快になることはないでしょうか。

    • Birewegge

      コメント、ありがとうございます。
      スイスドイツ語の違いに愕然とするのはドイツ人やオーストリア人などドイツ語圏出身のネイティブスピーカーにもあることです。逆に、その具体的な違いに気づけるほどドイツ語を勉強された証ですので今後も頑張ってください!私もこのようなご感想をいただけて、スイスドイツ語について語る甲斐があることを実感しましたので、継続させていただきたいと存じます。
      さて、寄せていただいた質問についてですが、無視されて拗ねる人はいますが、挨拶をされて不愉快に感じる人はいないと考えます。スイスのドイツ語圏にある会社であれば、スイスドイツ語での挨拶するも普通です。万が一、スイスドイツ語が伝わらない相手なら、それを確認してから別の対応を考えるのは自然の流れですので相手もそのような扱いには慣れているのではないでしょうか?
      また、名前で人を判断するのは失礼に当たる場合があります。特にスイスは多言語国家ですし、様々な国からの移民も大勢住んでいます。そのため、世界各国の名前に遭遇するのは日常茶飯事です。例えば、サッカーのスイス代表チームをご存知であればご理解いただけますが、「外国の名前の選手しかいないのでは?」と、思ってしまうほど実にバラエティに富んでいます。しかも、それらの選手全員がスイスの公用語のどれかを喋るのかどうかを疑問に思う人も少なくありません。それでも、スイス国籍を持っている人物またはスイス在住の人物ともなれば、生活する上でいずれの公用語を学んでいることが想定できることから、私ならとりあえずスイスドイツ語で話しかけます。話しかけてからフランス語圏やイタリア語圏の出身であることが判明して困ることもありますが、「Grüezi」はスイス在住の人だけでなく、多くの観光客も聞き慣れている言葉ですので、あまり深くか考えずに積極的に使いましょう!

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