ドイツのことわざ

犬も歩けば棒に当たる、論より証拠、花より団子…。日本語に様々なことわざがあるようにドイツ語にも、数多のことわざが存在します。ことわざのことをドイツ語ではSprichwortと言います。長い歴史の中で培われてきた教訓や格言など、生きていく中での知恵が凝縮されたことわざについて今日はお伝えします。

ことわざの起源は?

 

19世紀のドイツ文学者のカール・フリードリヒ・ヴィルヘルム・ヴァンダーの編纂した『ドイツ語ことわざ辞典』(Deutsche Sprichwörter Lexikon)には、およそ25万にも及ぶことわざが収録されています。さて、ドイツのことわざの起源の多くは、聖書や他の欧州諸国の文学などからの引用から発展したものが多く、必ずしもドイツ特有の表現や教訓というわけではありません。それどころか、日本の表現と非常に似通ったことわざもあります。

例えば

Wo Rauch ist, da ist auch Feuer.

直訳すれば「火のあるところには煙もある」となりますが、まさに日本語の「火のない所に煙は立たぬ」と同じですね。

Perlen  vor die Säue werfen.

「豚の前に真珠を投げる」こちらは日本語でも使われる「豚に真珠」と同様の意味ですが、元は新約聖書のマタイによる福音書7章6節にある「神聖なものを犬に与えてはならず、また、真珠を豚に投げてはならない」という表現からきています。日本語の「豚に真珠」も聖書からの引用だったというわけです。

ポピュラーなドイツのことわざ

 

とはいえ、なかには国民性を感じさせることわざもあります。ドイツのメディア、ドイチェヴェレ(Deutsche Welle)が選出したドイツで好まれていることわざの六つをここでご紹介しましょう。

  • Es ist nicht alles Gold, was glänzt. 直訳:光るものすべて金ならず

シェイクスピアの『ヴェニスの商人』からのことばで、煌びやかな外見にとらわれて、本質を見失わないようにという教訓です。

  • Lieber den Spatz in der Hand, als die Taube auf dem Dach. 直訳:屋根の上の鳩より、手の上のスズメの方が良い。

ラテン語のことわざ”Capta avis est melior, quam mille in gramine ruris”(捕らえられた一羽の鳥の方が、外にいる千羽の鳥より良い)を起源とし、派生していった表現で、手に入りにくい大きな利益より、手元にある確実なもので満足すべきという意味で、物事の確実性を重視した教えです。

  • Fünf Minuten vor der Zeit ist des Deutschen Pünktlichkeit. -直訳:ドイツの時間厳守は5分前

ドイツ人は時間に厳しいとよく言われているのでこのように自負したことわざなのかもしれません。しかしこの言われ、遅延が多くて悪名高いドイツ鉄道の運行状況を見ていると安易には信じがたいのも事実です…。

  • Übung macht den Meister. 直訳:練習が達人をつくる

職人の国といわれるドイツならではのことわざで、文化性が凝縮されていますね。厳しい修行を経て熟練の職人を目指すマイスター制度があるドイツですが、失敗を恐れずコツコツと修行を繰り返す姿を思わせるその言葉からはドイツ的な堅実さも感じさせます。

  • Wer anderen eine Grube gräbt, fällt selbst hinein. -人を呪わば穴二つ(直訳:他人の墓を掘る者は、自分がそこに落ちる)

こちらも旧約聖書からのことばです。言葉通り、他人を陥れようとすれば、自身も同じ目に遭う危険があるという戒めです。日本のことわざ「人を呪わば…」は、平安時代の加持祈祷を生業とした陰陽師が、人を呪いにかける際に、復讐にあうことを覚悟し、自身の墓穴も用意したことに由来するといわれています。

いかがでしたか?この他にもゲーテやシラーといったドイツの文豪たちの作品からの名言も好まれています。含蓄のあることわざを、ドイツ人と会話するときにサラリと引用できたら素敵かもしれませんね。


 

参考HP

 

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