スキー大国オーストリア

Wolfgang Ambrosというオーストリアのポップロックミュージシャンが1976年に発表した彼の代表作「Schifoan」という曲の中に「Schifoan is des Leiwandste, wos ma si nur vurstö’n kann♪」という歌詞があります。『スキーするのは想像できることの中で一番楽しいことさ』という意味で、オーストリア人のスキーに対する熱い想いを代弁しています。スキーはサッカーの次にオーストリアの国技だと言えます。でも正直に言うと、サッカーは人気があっても、他の国と比べてあまり強くありません。でもスキーは、実力の点でも世界最高であり、オーストリアの右に出る国はいないと言っても過言ではありません。

スキーはオーストリア文化の一部

 

スキーはオーストリア人にとってどのような意味があるかというと、日本の野球に例えると分かりやすいかもしれません。オーストリアではスキーに興味がない人でもスキー選手の名前は知っていますし、スキー選手の顔を広告で見かける機会も多いです。スキーはたんにスポーツ競技というだけではなくオーストリア文化の一部なのです。11月から3月にかけてはスキーシーズンにあたり、毎週ダウンヒルやスーパー大回転等の競技が放送されます。私は子供の頃クリスマス休みをいつも祖父母の家で過ごしていました。そこでお爺ちゃんと一緒にクリスマスクッキーを食べながらスキー観戦をしたのが今では私の大切な思い出です。日本に引っ越してからも、やはり冬はスキー競技を観たいです。オーストリアの選手は結構強いので、観戦していて楽しいし、オーストリア人として誇らしく思います。アルペンスキー世界選手権の国別メダル獲得数はオーストリアが断然トップです。そして世界選手権に並ぶ重要な「アルペンスキー・ワールドカップ」という大会では、個人成績でも国別成績でもオーストリアが最多勝を誇ります。オーストリア人にとってスキー競技での最も衝撃的な事件といえば、オーストリアのアルペンスキー選手・ヘルマン・マイヤー(Hermann Maier)が、1998年の長野オリンピックの滑降で転倒した事です。滑降は、130 km/h~150 km/hのもの凄いスピードで山を滑り降りる競技です。ヘルマン・マイヤーがもの凄いスピードでカーブに入ったとき、バランスを失って40メートルくらい空中に飛んで転倒しました。しかし思いのほか怪我は軽傷で済み、なんと彼はこの大クラッシュの3日後にまた競技に出て金メダルを獲得しました。

 スキー人口の増減

 

最初にスキーをした人はノルウェイ人だと言われていますが、現在のスキーの形を完成させたのはオーストリアです。1870年頃にオーストリアに伝わったスキーはいち早く人気になり、1883年にシュタイアーマルク州のMürzzuschlagで初めて国際的なスキーレースが行われました。当時はスキーリフトがなかったため、選手はスキーを滑る前に深い雪の中を何時間も登山しないといけない時代でしたが、スキーの魅力は瞬く間に広がり、早くもスキーを習える場所を求めてスキースクールの需要が生まれました。

スキースクールと言えば、一番有名なものは1921年にSt.Antontという山村で開校されたSkischule Arlberg でしょう。今年は開校からちょうど100周年に当たります。今はインストラクターが380人もいてオーストリアのスキースクールの中ではかなり大手のスクールです。さらに現在、オーストリアには合計で約400個所ものスキーリゾート地があるそうです

90年代まではオーストリア人のスキー人口はかなりの数に上っていました。その大きな要因は、子供たちが学校でスキーを習う義務があったからです。1996年まで学校には生徒たちを必ず「ウィンターシュポルトウォッヘ」(Wintersportwoche)に連れていくように義務付けられていました。クラスで1週間くらい山の民宿に泊まってスキーの能力別に別れて朝から夜までスキーを習いました。1996年以降もWintersportwocheを続けた学校もありましたが、義務ではなくなったため、続ける学校は激減しました。そのためWintersportwocheに参加する子供は年々少なくなり、その結果スキーのできる子供も減ってしまいました。

不安要素の多いスキーの未来

 

さらに、スキー人口が減少しただけではなく、スキーに行くこと自体にお金がかかるようになったこともスキー人気の低迷に拍車をかけました。10~20年前は、家族と7日間くらい「シーウラウブ」(Skiurlaub)と呼ばれる、スキーをするための休暇を取るのが一般的でした。今は時間とお金の問題からスキーリゾート地で過ごすとしても、滞在日数はせいぜい3〜4日になりました。宿からスキー用具のレンタル料まで含めると、スキーにかかる費用はたしかに高額です

そして、もう一つ憂慮すべきは、アルプスの雪が激減したことです。アルプスは地球温暖化の影響をもろに受けています。近年は氷河が溶けて後退し、雪が降らない年が続いています。2100年には標高1200m以下ではもう雪が降らなくなるという予測もあります。

オーストリアアルプスの標高はそれほど高くないので、これはとても大きな問題です。オーストリアのスキーリゾート地の将来、そして世界的なスキー人気の将来には不安要素がいっぱいです。

 


参考ホームページ

 

 

 

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