オーストリアのお酒

2020年、オーストリアにおける健康増進のための研究機関であるGesundheit Österreich GmbHの調査によれば、オーストリア人は1人当たり1年間で平均的にビールは106.9リットル、ワインは26.0リットル、シュナップス等の強いアルコール飲料は1.4リットルを飲んでいるそうです。他の国と比べるとかなり高い消費量だと言えます。ビールとワインは間違いなく一番人気の飲み物なのですが、その他にもシュナップス(Schnaps)からシュトゥルム(Sturm)までオーストリアでは様々なアルコール飲料が嗜好されています。たんにオーストリア人がお酒好きというだけでなく、オーストリアのお酒は文化や自然にも繋がりが深いと言えます。
例えば、オーストリアには至るところにビールの醸造所がありますし、東オーストリア地方には一面ブドウ畑の景色が広がっています。オーストリア人にとって、食べ物と同様にお酒も大事な嗜好品ですので、今回はオーストリアのお酒を紹介させていただきます。

 

 

 

 

最も人気があるビール

 

皆さんはオーストリアのビールを飲んだ事がありますでしょうか?醸造所がたくさんあるGösser(ゴッセル)、 Murauer (ムラウエル)、Zwettler(ツウェトッラー )、Stiegel (シュッティゲル)、Ottakringer(オッタクリンガー)は有名なビールの銘柄ですが、この他にもビールの種類はもっとあります。
ビールの容器は、基本的に2種類あり、0.5リットルはクゥーガル(Krügerl)、0.3リットルはサイデル(Seidl)と呼ばれています。
オッタクリンガーはオッタクリングというウィーンの16区で醸造されているので、ウィーンの俗語でオッタクリンガーの缶は16er-Blech(ゼヒツェーナ・ブレヒ)「16のブリキ」と呼ばれています。

 

 

 

ワインと同様にビールの歴史も長いです。すでに800年頃から修道院でビールが醸造されていたといわれています。ビールは飲み物のため、断食中でも飲むことが許されていたので、修道士に最も人気な飲み物になりました。しかしビールは現在のようにご馳走ではなくて毎日の飲み物でした。昔の街では飲料水が少ないため、水の代わりにビールを飲んでいたようです。栄養分も多くて今よりアルコール度数が少なかったので、昔の人には大事な食品でした(Planet Wissen, 2014)。

 

ビールをベースにしてレモネードと混ぜた飲み物はラドラー(Radler)と言います。Radlerとは自転車乗りの意味で、文字通り特に自転車乗りに愛飲されています。普通のビールのようにスーパーなどで缶や瓶として販売されていて、最近はグレープフルーツやラズベリーの味も出ました。アルコール数が低くて飲みやすいので、特に夏によく飲まれています。

 

ちなみに、オーストリアではビール政党 「ビールパルタイ」(Bierpartei )という政党があります。ウィーンにビールの噴水を設置したくて冗談のつもりで2015年に設立されましたが、だんだん真面目な目的も応援するようになりました。2019年の国民議会選挙で全投票数の0.1%を取りました(Die Bierpartei)。ビールの噴水の設置は今夏ウィーン市内の広場に一時的なアトラクションとして実現しました。

 

このようにビールはオーストリア文化にとって欠かせない嗜好品です。が、オーストリア人の私がこんなこと申し上げるのはどうかとは思いますが、私個人としては正直、日本のビールの方が飲みやすくて美味しいと思います。(o_ _)o

 

質が大事なワイン

 

東オーストリア地方で、紀元前10000年〜9000年くらいのブドウの種が発見されたことで、その地域では何千年も前からワイン生産がおこなわれていたという歴史的証拠となりました。その大昔からワインの生産はどんどん広がって、15世紀〜16世紀までは、ブドウ畑は今の3倍ありました。ドナウ川の川沿いにブドウ畑が広がり、アルプスでもワインが造られました (Österreich Wein a, 2022 )。

 

 

 

ワインはブドウの種類だけではなく、土壌や気候も味に影響するので、どこで育てられたのかはとても重要です。ヨーロッパの原産地名称保護制度により、原産地の地域毎に、ワインには特別な呼称があります。例えば、フランスの有名なボルドー(Bordeaux)地域のワインはAOC/AC、イタリアのキャンティ(Chianti)地域のワインはDOCG/DOCと呼称されます。現在、オーストリアではDAC (Districtus Austriae Controllatus)と呼ばれている上質ワインに与えられるステータスを獲得した原産地名称となる地域は、2022年2月現在で17箇所あります(Österreich Wein d, 2022 )。

 

オーストリアのワイン品質に対しては厳しい条件があります。検査をクリアしてこれらの条件を満たすと、クアリテツワイン(Qualitätswein)という質の高いワインの認定がもらえ、オーストリアの国旗を表す「赤・白・赤」のキャップシールが付けられます(Österreich Wein b, 2022 )。

 

秋の季節にはシュトゥルム(Sturm)を飲みます。ムスト(Most)と呼ばれているワインになる前の発酵途中の圧搾されたブドウジュースから造られたシュトゥルムは、甘くて自然の炭酸が入った絶品です。あまりに美味しくて飲みやすいのであっという間に酔っ払ってしまいます。発酵しているところを飲みますので、味は毎日変わります。発酵により炭酸ガスが発生するので、流通販売は難しく、通常は直接、産地の酒造園で購入します。ボトルが爆発する危険性もあるので、急いで飲まないといけません。シュトルムは9月から10月にかけての秋限定のスペシャルワインです(Steirische Spezialitäten; Weinviertel )。

 

若者はお酒に興味ない?

 

オーストリア政府が発表した1950年代から2020年までのデータを見ると、オーストリアのアルコール消費量は1980年代から2000年頃までにピークを迎え、それ以降は少しずつ減少していきました(Gesundheit Österreich GmbH, 2021)。ただし、新型コロナウイルスが発生したこの3年間でまた急激に上がったそうです。すなわち、ロックダウン中に皆が家で1人寂しくお酒を嗜む「家飲み」人口が増えたということです(ORF, 2021)。当時、日本でも外食ができなかったことで外飲みの消費量が減りましたが、オーストリアも同様の傾向にあったようです。

 

しかし概して、オーストリアでも日本でも、一昔前の世代と比べると、現代の若者の間では、酒を飲まない傾向がうかがえます(CNN, 2022)。ところで、オーストリアでは16歳からビールやワイン等を購入し飲むことができます。さらに強いお酒は18歳からです。結構若いですね。ただお酒がどんなに魅力的でも、若い世代の間には意識に変化があったようです。以前は多くの国で、毎日タバコを吸って飲酒することが、若者にとってむしろカッコ良いと思われがちでしたが、タバコ人気が衰退したように、健康への影響に対する理解が深まるにつれて飲酒も徐々にダサいと思われるようになるかもしれません。

 


 

参考ホームページ

 

CNN (2022) Japan wants young people to drink more alcohol. It’s just not sure how to convince them https://edition.cnn.com/2022/08/18/asia/japan-tax-alcohol-competition-intl-hnk/index.html

 

Die Bierpartei (2022) https://www.bierpartei.eu/lasset-das-bier-fliessen/

 

Gesundheit Österreich GmBH (2021) Handbuch Alkohol: Österreich

Band 1: Statistiken und Berechnungsgrundlagen 2021 https://www.sozialministerium.at/dam/jcr:70533de8-28a7-4124-8696-aa777bf6938e/Handbuch%20Alkohol%20-%20Österreich%20Band%201.pdf

 

oesterreich.gv.at (2022) Rauchen und Alkohol https://www.oesterreich.gv.at/themen/jugendliche/jugendrechte/3/Seite.1740250.html

 

ORF (2021) Alkoholkonsum im ersten Lockdown „massiv“ gestiegen https://ooe.orf.at/stories/3104262/

 

Österreich Wein a  (2022) Geschichte https://www.oesterreichwein.at/unser-wein/geschichte/

 

Österreich Wein b  (2022) Staatliche Kontrollnummer und Banderole https://www.oesterreichwein.at/unser-wein/das-weingesetz/staatliche-kontrollnummer-und-banderole

 

Österreich Wein c (2022) Strategie des Herkunftsmarketings https://www.oesterreichwein.at/unser-wein/strategie-des-herkunftsmarketings

 

Österreich Wein d  (2022) Weinlexikon von A-Z: DAC https://www.oesterreichwein.at/unser-wein/weinglossar-von-az?tx_a21glossary%5Buid%5D=7&tx_a21glossary_pi1%5Baction%5D=index&tx_a21glossary_pi1%5Bchar%5D=d&tx_a21glossary_pi1%5Bcontroller%5D=Glossary&cHash=b7f5abdf8450394262f99da7ab6a9076#glossary-7

Gebietstypischer Qualitätswein (DAC) | Österreich Wein (oesterreichwein.at)

 

 

Planet Wissen (2014) Geschichte des Biers  https://www.planet-wissen.de/gesellschaft/trinken/bier/pwiegeschichtedesbiers100.html

 

Steirische Spezialitäten (Keine Angabe) Sturm trinkt man im Herbst https://www.steirische-spezialitaeten.at/kulinarik/sturm-trinkt-herbst.html

 

Weinviertel (Keine Angabe) Stürmisch wird’s im Weinviertel https://www.weinviertel.at/sturm

 

 

 

Comments

(0 Comments)

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA