ウィーンのプラーター公園          ~Der Wiener Prater

昔ながらの街並み、いくつもの城、ドナウ川・・・ウィーンには素晴らしいところがいっぱいあります。
でも今回はプラーター公園(Prater)をご紹介しようと思います。

 

 

 

どこの街にも公園はありますし大きい公園がある街も多いですが、それぞれの公園にはその街独特の特徴や雰囲気が感じられると思います。
最も有名な例を挙げると、ニューヨークのセントラルパークでしょうか。セントラルパークはニューヨークの歴史や文化にとって、とても重要な公園ですね。確かにニューヨークの街を形造る1つの文化的歴史的要素であると言えます。プラーターはいわばウィーンのセントラルパークと言えるでしょう。ウィーン東の行政区の2区に位置しているこの公園は、ドナウ川とドナウ運河の間に挟まれた600万m2に及ぶ広大な敷地を有し、これはセントラルパークの約2倍の広さです。プラーターには大きく分けて2つの区域があります。「緑のプラーター」(Grüner Prater)は3kmを超えていて、その名前が示す様に草原や森林が広がる都会のオアシスです。そして北西の一角には「ウルシュテルプラーター」(Wurstelprater)と呼ばれている遊園地があります。
ちなみに、なぜだか分かりませんが、プラーター公園だけは「プラーター」と呼び捨てにされています。他の公園については、例えば18区のテュルケンシャンツパルク(Türkenschanzpark)のように、必ず語尾に「公園(Park)」を付けて呼ばれています。ウィーン市民とプラーターの関係性はあまりに近いので、親しみを込めて呼び捨てになってしまったのかもしれませんね?

 

 

皇帝の猟区から公共の公園

 

プラーター公園の歴史はびっくりするほど古いです。「Pratter」という地名が初めて記録されたのは1403年でした。名前の由来については諸説ありますが、ラテン語のpuratum(草原)から派生したものだという説があります。現在まで残っていて、公園を東西に隔てる並木道が1537年に造られました。しかし当時のプラーターは公園ではなく、キジや鹿を狩猟するための皇帝専用の猟区でした。元々ここはドナウ川の下流域に位置していて、川辺は草原や森になっていました。そこから時代が進むにつれてプラーターは時代時代の風潮に合わせて改装されてきました。
さらに19世紀にはドナウ川治水もおこなわれ、現在、その昔の氾濫原は池となって残っています。もしドナウ川の広大な氾濫原を見たいなら、ウィーンの南から広がっているNationalpark Donau-Auen 、つまり「ドナウ川氾濫原国立公園」に足を伸ばしてみてください。ここは、大規模な氾濫原の景観や生態系を保存しており、氾濫原の自然が守られて動物も多くてとても素晴らしいところです。

 

プラーターは1766年にやっと全ての住民に開放されて、正式に「公」園になりました。ところで、私がプラーターについて調べている中で、1794年当時の絵を見つけました。1537年に造られた並木道に何軒かのカフェが建てられた公園の当時の様子を垣間見ることができます。その時代でも公園でおしゃれにコーヒーを飲みたいという風潮があったのは、さすがにウィーンだなと思いました。

(Die Praterkaffeehäuser an der Hauptallee, um 1795(ハウプトアレー のプラーターカフェ、1794年頃)、Praterkaffeehäuser、CC BY-NC-ND 4.0

 

この並木道は「ハウプトアレー」(Hauptallee、メイン並木道)と呼ばれ、公園中央部を北西から南東方向に4.5kmにわたって直線状に延びているので、プラーターの中央部だと言えます。昔は晴れ着を着てハウプトアレーをゆっくりと優雅に散歩するのが流行だったのでしょう。今ではジョギングする市民ランナーで溢れており、道路を横断するのも危険なくらいジョギングが盛んです。

 

 

 

プラーターは緑だけではない

 

ハウプトアレーを西に向かって歩いて行くと、どこからともなく人々の絶叫が聞こえてきます。一体なんだろうと訝っていると、並木の緑から突如遊園地が現れます。ここがウルシュテルプラーターです。

この遊園地は1872年に「ウルシュテルプラーター」(Wurstelprater)から「ヴォルクスプラーター」(Volksprater)に名称変更されたのですが、実は私自身これまでヴォルクスプラーターという名称を一度も聞いたことがありません。150年経ってもなじみのない名称というのは市民の間に定着していない証拠なので、当時の改称は失敗だったのではないかと思います。なぜ改称したのか私にはよく分かりませんが、もしかして「ウルシュテルプラーター」という名称は言いにくい言葉だったのでしょうか?
ちょっと恥ずかしい話ですが、私は小さい頃、ウルシュテル(Wurstel)ではなくウィシュテル(Würstel)、つまり「ソーセージ」だと勘違いしていました。出店でソーセージも販売されているので、勝手に何年もの間、「ウィシュテルプラーター」(ソーセージプラーター)と呼んでいました。ウルシュテルプラーターの「ウルシュテル」はその昔プラーターにあった劇場の道化師のキャラクターHanswurst(ハンスウルスト)に由来しています。ハンスウルストのウルスト(wurst)はソーセージの意味ですので、そう考えると、私が子供の頃に「ウィシュテル」(ソーセージ)と呼んでいたのもあながち間違いとは云えないかもしれませんね。

 

ウルシュテルプラーターの最大の魅力は、何と言っても入園料がない事です。アトラクションに乗りたくない人でも自由に入園して雰囲気を楽しめます。ただしアトラクションに乗る場合は5〜15ユーロくらいかかるので、ちょっと出費の覚悟が必要です。色々乗りたいならお金が結構早くなくなります。お化け屋敷、ジェットコースター、小さい子供用のメリーゴーランド、とにかく何でも揃っていてとても楽しいです。

ハウプトアレーからウルシュテルプラーターに入ると、プラーターシュテルン(Praterstern)広場に出る前にウィーンの大観覧車(Wiener Riesenrad)があります。大観覧車は皆さんご存知でしょうか?ウィーンの街のシンボルと言えますね。64.75mの高さを誇り、ウィーンの街やドナウ川を一望できます。ゆっくりと優雅に回転しているので、今では少しレトロっぽく感じますが、この巨大な観覧車が1897年に建設された当時は、人々に与えた衝撃は凄まじかったことでしょう。ちなみに、この大観覧車には、一部ゴンドラの代わりにプラットホームが取り付けられている個所があります。床はガラス構造で屋根も壁もありません。ガイドさんと一緒にプラットホームに乗り、クライミングで使われているベルトで身体を固定します。高度65mの空中散歩を楽しみたい冒険心のある方は是非お試しください。まるでウィーンの空を飛ぶようです。

 

 

私はウィーンに住んでいた頃は、何年にもわたりほぼ毎日プラーターに通っていましたが、本当に良いところだと思います。街にこんな大きな公園がある事に感謝しないといけないですね。皆さんもチャンスがあれば、ぜひプラーターを訪れてみてください。

 


 

参考ホームページ

 

https://www.geschichtewiki.wien.gv.at/Prater

https://www.geschichtewiki.wien.gv.at/Volksprater

https://www.wien.gv.at/umwelt/parks/anlagen/prater.html

https://www.geschichtewiki.wien.gv.at/Datei:HMW_018999.jpg

 

 

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