好き嫌いが分かれるクリスマスマーケット

今年は、2019年以来3年ぶりにオーストリアでクリスマスマーケットが開催されています。

クリスマスマーケットはどんなに小さな村でも開催されます。多数の屋台が並び、そこではお菓子やおもちゃ、ニット帽、クリスマスデコレーションなど、あらゆるクリスマスグッズが販売されています。クリスマスのためのちょっとした買い物や友達とパンチ酒を飲んで酔っ払うことを楽しめるクリスマスマーケットは、クリスマスの日までの4週間、つまりドイツ語でVorweihnachtszeit (フォーァヴァイナハツツァイト)と呼ばれるとても大切な時節です。

近年日本でも人気になりましたので、確かにヨーロッパ外までその魅力が伝わっていると言えます。ちなみに、地域によって呼び方に少し違いがあります。
一般名称のWeihnachtsmarkt (ヴァイナハツ・マルクト)は基本的に日本語の「クリスマスマーケット」に相当します。

でも、オーストリアで最も使用されている名称はChristkindlmarkt (クリストキンデル・マルクト)です。「クリストキンデル」とは幼児キリストのことです。オーストリアではクリスマスにサンタさんが来るのではなく、幼児キリストからプレセントを貰います。そしてAdventmarkt(アドヴェント・マルクト)という名称もあります。アドヴェントはクリスマス前の4回の日曜日を含む期間で、日本でも「アドヴェントカレンダー」や「アドヴェントクランツ」という言葉が知られてきていますね。

 

 

クリスマスマーケットの歴史

 

実は、クリスマスマーケットの慣習がいつ始まったのかはよく知られていません。大体14世紀頃に初めてウィーンで冬やクリスマス用の商品を販売する市場が開かれたそうです。その後もクリスマス時期のマーケットの記録が残っていますが、現在の形のクリスマスマーケットは1722年に初めて開催されました。
ウィーンの1区に位置しているFreyung(フライウング)という広場では、108軒の屋台が並び、クリスマスグッズを買ってクリスマス前の時期を楽しむことができたそうです。その後何度も場所を変え、戦後はミュージアムクォーターという美術館群で開催されましたが、工事のため1975年に一時的な措置として市役所前に移動されました。しかし、移動してみると市役所前はクリスマスマーケットにはとてもピッタリな場所だったので、ミュージアムクォーターに場所を戻すことはありませんでした。
今は市役所前のクリスマスマーケットはウィーンのクリスマスマーケットの中で一番有名だと思います。間違いなく一番観光客が多く集まるマーケットです。80年代から他の場所でも次々とクリスマスマーケットが開催され、現在ではウィーンだけでも18ヶ所のクリスマスマーケットがあります。
オーストリア全体では優に100カ所を超えます。1989年からは、1722年に初めてクリスマスマーケットが開かれた場所であるFreyung広場でAltwiener Christkindlmarkt Freyungというクリスマスマーケットが毎年開催されています。

 

 

クリスマスマーケットの魅力

 

クリスマスマーケットを訪れると、外見的には似たような屋台が多く並んでいますが、でも実は屋台ごとにそれぞれ独自の魅力を備えています。クリスマスマーケットで一番多く見かけるのはパンチ酒(Punsch)と食べ物の屋台です。パンチ酒は果汁等を混ぜた温かいアルコール飲料です。子供にはアルコールが入ってない子供パンチ(Kinderpunschもあります。その他にも、お菓子やパン等、一般的に歩きながら食べやすい物がクリスマスマーケットでは好んで販売されています。私が一番好きな食べ物はGebrannte Mandel(ゲブランテ・マンデルン)と呼ばれる、砂糖とシナモンがかけられたアーモンドです。

 

クリスマスマーケット自体にもそれぞれに特徴があります。例えば、あるクリスマスマーケットは特に食べ物が美味しかったり、また他のところではとてもアーティスティックで個性的に作られたデコレーションを購入することができます。ですので、毎回違うクリスマスマーケットに行くと楽しいと思います。

 

 

クリスマスマーケットが嫌いな人のために

 

クリスマスマーケットはすべての人に愛されているわけではありません。クリスマスマーケットは昼間でも開いているので、人が多く集まり、かなりうるさいですし、迷惑だと思う人は多いです。ウィーンの1区はクリスマスマーケットの出店率が特に高くて、街中をクリスマスマーケットを避けて通るのは中々難しいです。クリスマスマーケットが嫌いな人のためにDer Falterという新聞が、ニュースレターでウィーン1区のクリスマスマーケットの所在地が一目で判るマップを提供しました。
このマップは予想以上の反響を呼んだため、Falterはちょっとしたお遊び心でこのマップを改良してボードゲームを作りました。その名も、「Mensch, ärgere dich nicht(イライラしないで)」と呼ばれるドイツのボードゲームをもじって「Grinch, ärgere dich nicht」と命名されました。グリンチ(Grinch)とはアメリカからの絵本に出てくるクリスマスが大嫌いキャラクターですね。

 

Falterのボードゲームは、ウィーン1区を環状に囲むRingstraße(リングシュトラーセ)に位置しているVotivkirche(ヴォティーフ教会)からスタートします。
そこから1区のクリスマスマーケットを通りますが、そのときパンチ酒の屋台(黄色の星)に駒が行き着くとスタートに戻らないといけません。駒が焼きマロンの屋台(青い色の星)に行き着くと次のラウンドは「1回お休み」をしないといけません。ソーセージの屋台に行き着くと次にパンチ酒の屋台に行き着いてしまってもスタートに戻らなくてよくなります。一番早くStadtpark(シュタットパーク)に行き着いた人が勝ちです。
Falterのボードゲームで遊びたい場合、ゲームのPDFをプリントアウトさえしたら、あとはサイロコと駒を用意するだけです。とても楽しいゲームでウィーンの街の地理についても勉強できますので、興味があればぜひ試してみてください (Falterのクリスマスマーケットボードゲームのリンク:https://cms.falter.at/falter/wp-content/uploads/grinch-aergere-dich-nicht-a3.pdf

 

では、良いクリスマスを!


参考ホームページ

 

2022年にオーストリア全国に開催されたクリスマスマーケットのリスト: https://www.austria.info/de/aktivitaeten/stadt-und-kultur/brauchtum-und-tradition/weihnachtszeit-in-oesterreich/advent-und-weihnachtsmaerkte

Austria-Forum. Adventmärkte https://austria-forum.org/af/Heimatlexikon/Adventmärkte_in_Österreich

NDR (2022) Weihnachtsmärkte: Von der Versorgung zum Vergnügen https://www.ndr.de/geschichte/chronologie/Weihnachtsmarkt-Geschichte-Von-der-Versorgung-zum-Vergnuegen,weihnachtsmarkt1370.html

Wien Geschichte Wiki (2022) Christkindlmarkt https://www.geschichtewiki.wien.gv.at/Christkindlmarkt

 

Comments

(0 Comments)

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA