四旬節、復活祭、聖霊降臨祭 ― オーストリアの春

 

4月9日は復活祭でした。3月のウィーンはまだ雪が降っていましたが、復活祭の季節になると春もやっと来たという気持ちになります。

復活祭という言葉を聞いた事があるかと思いますが、どういうイメージをお持ちでしょうか。

キリスト教の祝祭日の中で一番有名で人気があるのはクリスマスですね。例えば日本のようにキリスト教があまり普及していない国でもクリスマスは祝われます。

しかし、キリスト教にとって最も重要な祝祭日は復活祭だということをご存知でしょうか。

今回は復活祭を迎えるオーストリアの春について色々紹介させていただきます。

 

 

断食期間から始めましょう

 

復活祭は特定の日曜日だけを祝うその日限りのものではなく、春全体を通じて復活祭に関連する期間が設定されています。まず復活祭前の40日間は四旬節(しじゅんせつ)と呼ばれる断食期間です。

昔はこの期間がクリスマス後にやってくる、節制と回心に努める生活を送るための期間でしたが、全く食事をしていなかったわけではありません。

場所によってはバターや牛乳やお酒がダメという決まりもありましたが、基本的には肉を食べないことが一番のルールでした。

40日間我慢した後は、復活祭にご馳走を食べるというのが習慣でした。

でも近頃は、昔からの伝統に従って厳格に定められた断食をする人は少ないそうです。

逆に最近は宗教的な意義をあまり考えずに自分の好きな物を節制したり、自分の好きな娯楽を自粛するといった「自分断食」をする人が増えてきました。

例えば、四旬節中は大好きなお酒を我慢したり、お菓子を食べなかったり、テレビを見なかったり、あるいは車の代わりに自転車だけで移動したり、さらにはSNSを使わない等、個人的な目的を持って「断食」と解釈する人も珍しくないです。

私の周りにも毎年何かを「断食する」人がいます。この場合は本当に「断食する」ドイツ語でfasten(ファステン)という言葉を使います。

例えば、車を運転しないのは「車断食」Autofasten(アウトファステン)、携帯の使用時間を減らすのは「ケータイ断食」Handyfasten(ハンディファステン)と言います。

 

ハッピー・イースター Frohe Ostern

 

復活祭はクリスマスのように決まった日付がありません。

基本的に春分後最初の満月の次の日曜日ですので、毎年変わります。

今年の春分の日は3月20日でした(日本は時差のため21日でしたね)。

春分後の最初の満月は4月6日でしたので、満月の次の日曜日に当たる4月9日が今年の復活祭でした。オーストリアの春分の日は3月19日〜21日頃ですので、復活祭は例年3月22日〜4月25日の間のいずれかの日曜日となります。

復活祭の場合、太陰暦まで知らないといけないので、これがクリスマスの方が人気がある理由のひとつかもしれませんね。

先に書いてたように復活祭はキリストの復活記念祭としてキリスト教にとって最も重要な祝祭日です。

ただ、キリストの復活祭と言っても、基本的にはキリストのみならず様々な意味で「復活」をテーマにしていると言えます。。

例えば長い冬の後に自然が復活することにも繋がっています。復活祭の象徴は卵、ウサギ、子羊、などの春と出産に関係があるものです。(そしてもちろんキリスト教にとっても大事な象徴、例えば「神の子羊」はイエス・キリストを指す象徴です。)

 

復活祭の卵(Osterei = オースタァ・アイ)は殻が染められたゆで卵です。卵は見た目は石の如く動かないのに生命を生むことから、死と復活を同時に象徴しますし、昔は四旬節中は食べることを禁止されていたので復活祭のご褒美になりました。

あの頃すでに卵を染める習慣が始まり、祝福された卵に特別な卵として染色を施したそうです。

今は卵は復活祭にとって一番大切な必需品だと言えます。染めたゆで卵はスーパーで買うか、天然染料か専用の染料でオリジナルの復活祭の卵を作ることができます。

 

 

復活祭のお祝いはディナーより朝ご飯の方が大事です。

特にブランチタイムが人気で、美味しい食べ物を家族と一緒にゆっくり食べます。地域によってそれぞれ特有の食べ物がありますが、基本的にはハム、卵、イーストを入れた生地から作られたパンを食べます。

もう一度復活祭の卵に触れておくと、もうひとつ卵の戦い(Eierpecken = アイアペッケン)というとても面白い習慣があります。

朝ご飯を食べながら卵の戦いをします。

ルールは簡単です。皆それぞれ復活祭の卵を選んで手に持ちます。お互い手の中の卵をぶつけ合って先にヒビが入った方が負けというゲームです。

ルールは、まず、卵の尖った先端を相手の卵の先端にぶつけて、次は相手が卵のお尻をこちらの卵のお尻にぶつけます。Spitz auf Spitz und Oasch auf Oasch (シュピツ アウフ シュピツ ウント オアシュ アウフ オアシュ)

つまり卵の「まずは先端と先端、次にお尻とお尻」をぶつけ合うという順番で戦います。

 

 

卵の戦いよりも楽しくて特に子供が大好きなのは復活祭の巣(Osternest –オースタァ・ネスト)探しです。

サンタさんのように贈り物を届けにきたウサギが庭や家に隠した復活祭の巣を皆でワイワイ騒ぎながら探します。

もちろん人によって違いますが、復活祭の巣にはゆで卵、チョコレートの卵、チョコレートのウサギ、そしてちょっとしたおもちゃなどが入っています。

例えば私の家族は復活祭の巣に必ず靴下も入れます。なぜ靴下なのか全くわかりませんが、オーストリアの一般的な習慣ではないと思います。

でも毎年新しい靴下を貰えるので文句は言えません。

 

春の終わりー聖霊降臨祭

 

復活祭から50日目の日曜日、つまり復活祭後の第7日曜日は聖霊降臨祭です。

ドイツ語でPfingsten(プフィングステン)と呼ばれる聖霊降臨祭をもって復活祭の時節が終わります。

そして聖霊降臨祭は夏の始まりだと言われます。今年は5月28日(日曜日)と29日(月曜日)です。

聖霊の祭日の宗教的な意味は時間と共に薄れてしまったので、今は意味がわかる人は少ないと思います。聖霊降臨祭の決まった習慣は特にありませんが、土曜日を入れて3連休にすることもできるので小旅行をする人も多いです。

 

各季節楽しめますが、長い冬の後の春は特にいいですね。

では、また次回。

 


参考ホームページ

・Österreich Spezialitäten (2023) Wie feiert man Ostern in Österreich?

・NDR (2022) Ostersymbole: Was bedeuten Hasen, Eier, Lämmer und Feuer?

・NDR (2022) Pfingsten: Welche Bedeutung hat das Fest?

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