ドイツの治安 犯罪率の増加

 

欧州内では比較的治安が良いと言われてきたドイツ。

たしかに南欧ほどスリや窃盗は多くない印象ですが実際はどうなのでしょうか。

先日発表されたドイツ警察犯罪統計の2023年の調査結果では犯罪件数は594万件と前年比5,5%の増加で、2016年以降最も多い数字となってしまいました。

国内では様々な議論が交わされています。

 

 

ドイツの警察犯罪統計

 

前述の警察犯罪統計(Polizeiliche Kriminalstatistik)は、ドイツ全土16州の犯罪捜査機関から提供されたデータに基づいた統計で毎年発表されており、最も有名かつ参照されている統計といえます。

この統計では警察が捜査した犯罪件数を取り扱うため、まだ犯人が特定されていないものや判決が下されていない案件も含まれています。

また国家安全保障に関する犯罪、交通違反、金融犯罪、租税に関する犯罪など警察の権限に属さない犯罪は含まれておらず、交通違反に関しては件数が多いため、統計から省かれています。

2016年以来最も多い犯罪件数を記録した2023年ですが、594万件の犯罪のうち最も多い犯罪は窃盗、第二位は財産および偽造犯罪、第三位は詐欺となりました。

また前年比の増加率が最も高かったのは不法入国で40%増、第二位は不法滞在で29%増、第三位が不法侵入で12%増となりました。

また強盗、暴行といった犯罪も激増し(8.6%増)その容疑者には若者と外国人が占める割合が高いため、移民に関する政治的な議論も活発となっており、外国人排除への後押しともなり得る統計結果にドイツ国内も揺れているようです。

 

 

犯罪率増加の背景と統計への批判

 

さて、一見増加傾向にあるようにみえる犯罪件数ですが、もう少し長いスパンで観察する必要があるようです。

ドイツ国内の犯罪率は、1990年代半ばから2000年代半ばまでは年々増加傾向にあり、ピーク時は2007年でしたがこの年を境に減少傾向にありました。

2015年から2017年にかけては「難民危機」の影響によって急増したものの、その後は再び減少傾向にあり、2020年からの3年間は新型コロナウィルスの影響によってさらに減少していたというのが実情です。

パンデミック期のドイツは長期間のロックダウンや面会制限など厳しい規制がありましたが、2023年の春には最後の規制がなくなり日常生活を取り戻したため、犯罪も自ずと増加したということです。

犯罪増加に関するその他ふたつの要因には、インフレと移民の動態が挙げられています。2023年は高いインフレ率に市民が苦しみ、このような社会状況が犯罪へのリスクとなっていることが専門家によって指摘されています。

またパンデミック収束やウクライナ戦争などによってドイツ国内の移民は再び増加しておりその動態変動が激しいため、シェルターの収容人数の多さや転居の多さが不安定な環境を生み出していることも犯罪増加の要因となっているとの見方がされています。

しかし犯罪学の専門家らは、メディアやSNSなどによって取り挙げられる移民や外国人へのネガティブなイメージへは警鐘をならしており、犯罪の引き金となるのは国籍ではなく、貧困などの社会状況、教育水準の低さ、長期にわたったコロナ感染拡大予防による規制で疲弊した若者たちの心理的ストレスであることを説いています。

またこの犯罪統計自体も批判されることが多く、統計上の犯罪件数には含まれない犯罪(セクハラ、虐待、性的暴行、薬物犯罪、汚職といった未報告事件など)の存在、そして住民の通報行動の変化や警察の取締強化によっても大きくその数値は変わるため、実際の犯罪件数との乖離があると推測、批判されています。

 


参考HP

 

 

 

 

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