ドイツの住宅事情 ― 暮らしの場としての家

 

ドイツの街を歩けば、19世紀に建てられた集合住宅や、戦後に整備された大規模団地が、今も人々の生活を支えています。
日本では新築こそ価値があるという考え方が強い一方、ドイツでは古い建物を修繕し、世代を超えて住み続ける文化が息づいています。
住宅は資産ではなく暮らしの基盤である―そんな価値観が、ドイツの住宅事情を形づくってきました。

 

賃貸が当たり前?その歴史的背景

 

ドイツの持ち家率は約47.3%(2024)と先進国の中でも低く、欧州で賃貸世帯が多い国です。
戦後の住宅不足を補うため、国や自治体は公共住宅を大量に建設しました。
ベルリンのモダニズム集合住宅群はその象徴で、今では世界遺産にも登録されています。

こうした政策が、住宅は誰もが享受すべき社会的権利という考えを育み、長期契約が可能で質の高い賃貸市場を支えてきました。
また、住宅ローンの制度も日本と大きく異なります。

頭金として購入価格の4割程度を自己資金で用意しなければならず、貸出上限も厳格に制限されています。
これは身の丈に合った暮らしを守るための仕組みであり、不動産を投機対象にさせないという哲学が垣間見えます。
そのため、ドイツ人の間では無理に買うより賃貸で自由を保つという価値観が自然に受け入れられてきました。

 

 

新築よりも中古 ― 長く使う住宅文化

 

日本では新築住宅が売れ筋で、築30年の家は資産価値がゼロに近いとされます。
しかしドイツではむしろ逆で、1978年以前に建てられた住宅が全体の7割を占め、古い家ほど価値があるとさえ考えられます。
石やレンガ造りの建物は数百年に耐えうるため、適切に修繕すれば次世代へ引き継げるのです。
リノベーション産業も盛んで、古さを魅力として住まいに取り入れる姿勢が一般的です。

では実際に購入するといくらかかるのでしょうか。
日本の戸建てで一般的な100㎡を基準に考えると、ミュンヘンの中古住宅は1㎡あたり約8,500ユーロ。
100㎡なら約85万ユーロ、為替レート1ユーロ=172円(2025年8月現在)で換算すると約1億4,500万円となります。

日本でよくある3,000万~4,000万円のマイホームと比べると、まさに桁違いです。
ただし地方都市や旧東ドイツ地域では、1㎡あたり2,000ユーロ程度の物件も多く、100㎡で2,000万~3,000万円台と日本に近い価格帯で手に入ります。
都市と地方の価格差は大きく、これもドイツ住宅市場の特徴のひとつです。

 

ドイツの住宅事情を眺めると、単なる物価や不動産価格の違いを超えて、文化や歴史の積み重ねが浮かび上がってきます。

賃貸重視の政策、堅実なローン制度、石造りの家を大切にする文化――これらすべてが「住宅は投資ではなく、暮らしの場」という価値観を形づけてきました。
日本では”いつかはマイホーム“が人生設計の前提とされがちですが、ドイツでは”賃貸で柔軟に暮らす“こともまた自然な選択肢。

こうした違いを知ることは、私たち自身の住まいへの考え方を問い直すきっかけになるのではないでしょうか。


参考HP

ドイツのモダニズム集合住宅群 Wikipedia:https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%99%E3%83%AB%E3%83%AA%E3%83%B3%E3%81%AE%E3%83%A2%E3%83%80%E3%83%8B%E3%82%BA%E3%83%A0%E9%9B%86%E5%90%88%E4%BD%8F%E5%AE%85%E7%BE%A4

Wohneigentumsquote in Deutschland 2024 Statistisches Bundesamt (Destatis):https://www.destatis.de/DE/Themen/Gesellschaft-Umwelt/Wohnen/Tabellen/tabelle-eigentumsquote.html

Wohneigentumsquote Deutschland 2024, Trends und Herausforderungen
wohn-glueck.de:https://wohnglueck.de/artikel/wohneigentumsquote-deutschland-27738

Immobilienpreise in München – Durchschnittspreis pro Quadratmeter Engel & Völkers:https://www.engelvoelkers.com/de-de/immobilienpreise/bayern/muenchen/

Grundstückspreise und Quadratmeterpreise München – Marktinformationen Fischer Immobilien München:https://www.fischer-immobilien-muenchen.de/immobilienpreise/real-estate-agent-munich/

Immobilienpreise Deutschland – Durchschnittspreise und Regionalvergleiche Immowelt:https://www.immowelt.de/immobilienpreise/deutschland

Immobilienpreise München im Überblick – Eigentumswohnungen (Stand August 2025) Immowelt:https://www.immowelt.de/immobilienpreise/muenchen

ドイツはキャッシュレス社会!?

 

キャッシュレス化が緩やかに進行するドイツ

 

利便性の向上、経済の効率化、現金管理コストの削減を目的として、世界各国で積極的に進められているキャッシュレス決済。

日本政府は、キャッシュレス決済の普及を経済成長戦略の一環として位置づけ、2025年までにキャッシュレス決済比率を約40%に引き上げる目標を掲げ、将来的には世界最高水準の80%を目指しているということです。

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スイスの国民的炭酸  

 

皆様は何年か前に「フランスの国民的炭酸」で話題になった「オランジーナ」(Orangina)をご存知でしょうか?

オランジーナとは1935年にスペインの薬剤師によって開発され、その後フランス人が販売権を購入して世界中に広めた炭酸入り清涼飲料のことで、フランスでは最も消費されているソフトドリンクのひとつとして有名です。

そして、2012年に日本でも販売が開始され、オランジーナは瞬く間に日本人の心を掴んで販売者の予想をはるかに超える大ヒット商品となったので、飲んだことがあるという方も少なくはないと思います。

そんな日本人の間でも人気なフランスの国民的炭酸ですが、実はスイスにもオランジーナに負けないぐらいの国民的炭酸と呼べる独自の飲み物が存在します。

スイスを訪れたことのある方ならこの事実を既に知っている可能性があるものの、現地に行ったことがなければ実物を目にする機会もないことから、大半の人にとっては初耳の筈です。

そこで、今回は読者の皆様にスイス国内の飲料事情についての知識を深めていただくために、スイスの国民的飲料をはじめ、スイスでしか味わえないおすすめ商品をご紹介させていただきます。

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ドイツの森歩き

 

ドイツ人に「ちょっと散歩に行こうよ!」と誘われて、「いいね!」と軽い気持ちで応じたのは良いものの、相手ががっしりした靴と雨風をしのげるアノラックを着て登場したことに驚いたことはありませんか?

そう、ドイツ人にとって、散歩とはそこらの近所を15分ほど歩いて帰ってくるのではなく、一時間近くの時間をかけて、また近くに森がある場合は森の中をぐるりと回って、ガッツリ歩くのが普通なのです。

友人や家族と一緒に歩きながら、どうでもいい下らない話をしながら、また時には真剣に話し込んだり、またある時には周りの景色を楽しみながら歩いていると、一時間なんてあっという間!お金もかからないし、リフレッシュ効果も素晴らしいので、私もハイキング靴を二足揃え、アノラックも三着は家に用意するほど、森歩きが大好きになりました!

 

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スイス人のソウルフード「セルヴェラ」

 

いきなりですが、皆様はスイス人の主食といえば何だと思いますか?

というのも、日本人は必ずと言っていいほどお米をメインの食材にして様々なおかずを添える習慣があり、主食と副食が明白になっているせいか、国外でも同様な概念があると考えているようです。

しかし、スイスを始め、欧米諸国ではそのような概念がないため、主食は何だと尋ねられた際にいつも困ってしまい、強いて言うなら「パン」もしくは「ジャガイモ」がそれに当たると答えるしかありません。

したがって、スイス人に対して主食は何であるかを尋ねた際に納得のいく回答を得るのはなかなか難しいです。

一方、スイス人なら誰しもが口を揃えて自身の「ソウルフード」と主張する食べ物なら存在します。

国外ではさほど有名でないものの、スイス人から見ればそれは「スイスの国民食」などと称されるほど絶大な人気を誇り、季節を問わずに色々なシチュエーションで食べられている食材です。

という訳で、今回は意外と知られていないスイス人のソウルフードである「セルヴェラ」をご紹介させていただきます。

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発明大国スイス

 

皆様は「発明家」という言葉を聞いたらどのような人物を思い浮かべますか?

ドイツ語圏では活版印刷技術の発明家として知識を全世界に広めることを可能にしたヨハネス・グーテンベルク(Johannes Gutenberg)がおそらく代表例として挙げられますが、日本では京都にもゆかりのあるトーマス・エジソン(Thomas Edison)と答える人が多いのではないでしょうか?

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