リンゴ州の都フラウエンフェルト

 

本ブログではこれまでかなりの数のスイスの名所をご紹介させていただいたほか、様々な内容についてのお話でもそれぞれの地方や州の名前が何らかの形で登場してきましたが、スイス連邦を構成する全26州のうち、1州だけは過去に一度も出てきたことがございません。

これは筆者が意図的に触れるのを避けたり、言及する価値がなかったりした訳ではなく、単なる偶然が生んだ結果ですので、その名前を全く挙げてこなかったことに対してむしろ罪悪感があります。

その州とはスイス北東部に位置し、ボーデン湖(Bodensee)を隔ててドイツおよびオーストリアと国境を接するトゥールガウ州(Kanton Thurgauです。

当該州は人口と面積が何れも26州中12位で、数値だけを見ればスイスの平均で推移しているものの、州全体において自然がとても豊かで、果実栽培が盛んに行われていることで知られています。

特にリンゴに関しては生産量が常に全国1位を誇ることから、「リンゴ州」(Apfelkanton)とも呼ばれているほどです。

したがって、今回はそんな初登場ながらもスイスを代表する果物産地であるトゥールガウ州の州都を担っているフラウエンフェルト(Frauenfeld)をご紹介させていただきます。

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ドイツの住宅事情 ― 暮らしの場としての家

 

ドイツの街を歩けば、19世紀に建てられた集合住宅や、戦後に整備された大規模団地が、今も人々の生活を支えています。
日本では新築こそ価値があるという考え方が強い一方、ドイツでは古い建物を修繕し、世代を超えて住み続ける文化が息づいています。
住宅は資産ではなく暮らしの基盤である―そんな価値観が、ドイツの住宅事情を形づくってきました。

 

賃貸が当たり前?その歴史的背景

 

ドイツの持ち家率は約47.3%(2024)と先進国の中でも低く、欧州で賃貸世帯が多い国です。
戦後の住宅不足を補うため、国や自治体は公共住宅を大量に建設しました。
ベルリンのモダニズム集合住宅群はその象徴で、今では世界遺産にも登録されています。

こうした政策が、住宅は誰もが享受すべき社会的権利という考えを育み、長期契約が可能で質の高い賃貸市場を支えてきました。
また、住宅ローンの制度も日本と大きく異なります。

頭金として購入価格の4割程度を自己資金で用意しなければならず、貸出上限も厳格に制限されています。
これは身の丈に合った暮らしを守るための仕組みであり、不動産を投機対象にさせないという哲学が垣間見えます。
そのため、ドイツ人の間では無理に買うより賃貸で自由を保つという価値観が自然に受け入れられてきました。

 

 

新築よりも中古 ― 長く使う住宅文化

 

日本では新築住宅が売れ筋で、築30年の家は資産価値がゼロに近いとされます。
しかしドイツではむしろ逆で、1978年以前に建てられた住宅が全体の7割を占め、古い家ほど価値があるとさえ考えられます。
石やレンガ造りの建物は数百年に耐えうるため、適切に修繕すれば次世代へ引き継げるのです。
リノベーション産業も盛んで、古さを魅力として住まいに取り入れる姿勢が一般的です。

では実際に購入するといくらかかるのでしょうか。
日本の戸建てで一般的な100㎡を基準に考えると、ミュンヘンの中古住宅は1㎡あたり約8,500ユーロ。
100㎡なら約85万ユーロ、為替レート1ユーロ=172円(2025年8月現在)で換算すると約1億4,500万円となります。

日本でよくある3,000万~4,000万円のマイホームと比べると、まさに桁違いです。
ただし地方都市や旧東ドイツ地域では、1㎡あたり2,000ユーロ程度の物件も多く、100㎡で2,000万~3,000万円台と日本に近い価格帯で手に入ります。
都市と地方の価格差は大きく、これもドイツ住宅市場の特徴のひとつです。

 

ドイツの住宅事情を眺めると、単なる物価や不動産価格の違いを超えて、文化や歴史の積み重ねが浮かび上がってきます。

賃貸重視の政策、堅実なローン制度、石造りの家を大切にする文化――これらすべてが「住宅は投資ではなく、暮らしの場」という価値観を形づけてきました。
日本では”いつかはマイホーム“が人生設計の前提とされがちですが、ドイツでは”賃貸で柔軟に暮らす“こともまた自然な選択肢。

こうした違いを知ることは、私たち自身の住まいへの考え方を問い直すきっかけになるのではないでしょうか。


参考HP

ドイツのモダニズム集合住宅群 Wikipedia:https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%99%E3%83%AB%E3%83%AA%E3%83%B3%E3%81%AE%E3%83%A2%E3%83%80%E3%83%8B%E3%82%BA%E3%83%A0%E9%9B%86%E5%90%88%E4%BD%8F%E5%AE%85%E7%BE%A4

Wohneigentumsquote in Deutschland 2024 Statistisches Bundesamt (Destatis):https://www.destatis.de/DE/Themen/Gesellschaft-Umwelt/Wohnen/Tabellen/tabelle-eigentumsquote.html

Wohneigentumsquote Deutschland 2024, Trends und Herausforderungen
wohn-glueck.de:https://wohnglueck.de/artikel/wohneigentumsquote-deutschland-27738

Immobilienpreise in München – Durchschnittspreis pro Quadratmeter Engel & Völkers:https://www.engelvoelkers.com/de-de/immobilienpreise/bayern/muenchen/

Grundstückspreise und Quadratmeterpreise München – Marktinformationen Fischer Immobilien München:https://www.fischer-immobilien-muenchen.de/immobilienpreise/real-estate-agent-munich/

Immobilienpreise Deutschland – Durchschnittspreise und Regionalvergleiche Immowelt:https://www.immowelt.de/immobilienpreise/deutschland

Immobilienpreise München im Überblick – Eigentumswohnungen (Stand August 2025) Immowelt:https://www.immowelt.de/immobilienpreise/muenchen

【セミナー情報】2025年9月27日(土) WEBドイツ語特許翻訳入門セミナー

2025年9月27日(土) WEBドイツ語特許翻訳入門セミナー

参加無料 開催決定!

~ドイツ語特許翻訳って何??~

Was genau ist eine deutsche Patentübersetzung ?

ドイツ語好きにはたまらないその魅惑の世界をご紹介します!

 

今年も、ドイツ語特許翻訳講座入門コースのスタートに先立ちまして、トランスユーロアカデミーの人気セミナー『ドイツ語特許翻訳入門セミナー』(参加無料)を開催することが決定しました!

そもそも「ドイツ語特許翻訳って何?」といった初歩的な疑問をお持ちの人は多いと思います。そんな人の疑問にお応えし、特許翻訳の魅力をお伝えするための入門セミナーです。

入門セミナーなので参加費無料です!

今回も、日本各地や海外から多くの人がご参加できるようにWEB形式での開催にいたします。「ドイツ語特許翻訳って何だろう?」と興味をお持ちになった人は、全国または全世界のどこからでもお気軽にご参加いただけます。もちろん、学生さんのご参加も大歓迎です!

▶早速申し込む!


「特許」(Patent)とは発明(Erfindung)を保護するものですが、商標や意匠と違って、特許の権利範囲はことばによって括られるものであり、ことばが重要な役割を担いますので、ドイツ語特許翻訳の世界は、言語としてのドイツ語本来の醍醐味を思い切り堪能できる世界です。

ドイツ語好きで、知的探求心が強く、成長意欲のあるあなたなら、必ずその面白さに夢中になること請け合いです!


 

 

今回の入門セミナーの講師は、35年を超えるドイツ語特許翻訳歴を持つトランスユーロのロックな代表・加藤勇樹(かとうゆうき)が務めます。

加藤の講座は、見かけによらずやさしくて分かりやすい・対応が丁寧・フォロー体制がしっかりしていると、常に高評価をいただいており、加藤担当の特許翻訳講座は毎回、即満員御礼となります。

最近は積極的にドイツ語特許翻訳の普及活動に努めており、2025年は7月にトランスユーロアカデミー初のチャレンジとなるドイツ語特許翻訳の体験ワークショップを開催するなど、そのロックな活動の幅を広げております。

これらの活動を通じて、「特許翻訳」と聞くと、やはりお堅くてハードル高そう、というイメージをお持ちの人が特許翻訳に少しでも興味を持っていただける機会を増やそうと頑張っています。

また、加藤自身は会社代表になった今も翻訳者として第一線で活躍しており、トランスユーロの貴重な戦力でもありますので、現役の特許翻訳者ならではの話をお届けできます。

 

ドイツ語特許翻訳体験のワークショップにチャレンジ

 

本入門セミナーでは、最新の業界動向や実際のドイツ語特許明細書の文章を使って「実践・特許翻訳」を披露したり、参加者からのご質問に応えたり、入門者にも分かりやすく、かつ密度の濃いロックな時間をご提供します。

特許翻訳に興味がある人はもちろん、単にドイツ語がめっちゃ大好きという人や、加藤がどんな変な人なのか興味がある人も、皆様ぜひご参加ください。

 

『ドイツ語特許翻訳入門セミナー(WEB)』(参加無料)
  • 開催日:2025年 9月27日(土)
  • 時間:19:00(日本時間)開演(公演時間は約1時間30分を予定)
  • セミナー形式:Zoom配信
  • 講師:加藤 勇樹
  • 申込締切り:2025年9月22日(月)

 

参加希望の方は以下フォームからお申し込みください。
*「お問い合わせ内容」から「9/27(土)ドイツ語特許翻訳入門セミナー」をご選択ください。

セミナーお申し込みフォーム

 


【予告!】『WEBドイツ語特許翻訳講座入門コース』(全6回)につきましては下記の日程で開催予定です

10/10 10/24 11/14 11/28 12/12 12/26(各金曜日19:30-21:00、全6回)

講師:加藤勇樹

テキスト:実際のドイツ語特許明細書

本HPにて申込み受付を開始しますので、しばらくお待ちください!

 

世界を股に掛けたスイスの建築家

唐突なご質問で大変失礼いたしますが、皆様は「スイス出身の建築家をご存知ですか?」と聞かれた時に思い浮かぶ名前がありますか?

私の勝手な想像で言うと、建築関係のお仕事に従事されている人を除けば、大半の人は時間を掛けてじっくり考えてもおそらく一人もお答えできないと思います。

スイスと言えばアルプスの山々を中心とした壮大な大自然のイメージが強く、有名な観光地に関してもリゾート地や歴史的都市が殆どですので、建築家どころか、スイス国内には世界的に知られている建築物すらないとの印象を持っている方が多い筈です。

しかし、そんなスイスにも有能な建築家は数えきれないほど存在し、世界各地で偉大な作品を手掛けたグローバルに活躍する人たちもいます

そして、それらの建築家は日本にもいくつかの足跡を残しており、皆様が既に何らかの接点を持っている、もしくは今後持つ可能性が非常に高いです。

したがって、今回は読者の方々も日常生活で触れる機会がある「世界を股に掛けたスイスの建築家」をご紹介させていただきます。

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車の運転~ハプニング編

車を運転する時は、いつも安全運転を心掛けたいものですが、運悪くトラブルに巻き込まれることってありますよね。

私はかれこれ10年程、安全運転をモットーにドイツで車を運転していますが、今回は運悪くハプニングが発生した時のエピソードをお伝えしたいと思います。

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Znüni, Zvieri, Bettmümpfeli
スイスドイツ語講座その18:食事関連の用語

 

振り返れば、これまでのスイスドイツ語講座では様々な食材や飲料が登場し、食べ物に関する内容が多かったような気がします。

食料は栄養補給の観点から生きていく上で必要不可欠なだけでなく、人生の楽しみのひとつにしている方も少なくはないことから、本ブログでもそれなりの頻度で採り上げてきたのはある意味妥当かもしれません。

また、過去には「いただきます」や「ご馳走様」など食卓で使用する表現はご紹介しましたが、食事そのものの言い方をまだ教えていませんでしたよね?

現地で生活していると仕事の合間に摂る「昼食」をはじめ、食事関連の言葉を日常的に使うのでそれらを知らないと相当困ります。

一方、旅行で短時間だけスイスを訪れた観光客も「朝食付きでの宿泊プランでお願いします」または「朝食は何時から何時までですか?」といった様々な場面で食にかかわる用語を用いることが必要です。

そこで、今回は知っていると色々なシチュエーションで意外と便利な食事用語についてのお話をさせていただきます。 ⇒続き

ウィーンの音楽家の跡を旅する

 

気が付けば今回で3回目のブログ記事となります。

ウィーンと言えば音楽の都ですので、沢山音楽家がいますが、その中でも今回は生誕200周年のあの人を現在でも感じられる場所を、ゆる~く発信していければと思います。

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„Birne“ の発音は本当につづり通り?

皆様こんにちは。南ヨーロッパでは40度を超えた地域もあり、ドイツもしばらく暑い日が続きましたが、急に気温が下がりお天気も不安定になりました。

気候変動をひしひしと感じます。日本は猛暑が続くようですが、皆様いかがお過ごしでしょうか。

さて、今回のテーマは発音に関するちょっとしたお話をしたいと思います。

ドイツ語を学習する際に「ドイツ語は発音のルールも比較的固定されるし、例外もないから学びやすい」と言われることがあるかと思います。

実際、英語やフランス語に比べればドイツ語のスペルと発音の関係性は比較的学びやすく、覚えやすいものが多いというのが、私が初学者の頃に感じたものでした。

そんな風に感じながら学習歴を数年重ね、当時タンデムパートナーであった夫とタンデムをしていた学生時代。

とある単語の発音について笑われるという出来事がありました。それが„Birne“の発音だったのです。

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【ワークショップ開催レポート】
2025年7月6日(日)ドイツ語特許翻訳 体験ワークショップを開催しました!

都内は大変な猛暑でしたがそんな暑さにも勝る盛り上がりで、14名の参加者と一緒に、ドイツ語特許翻訳を体験していただきました。

その様子をすこしご紹介します!

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ドイツはキャッシュレス社会!?

 

キャッシュレス化が緩やかに進行するドイツ

 

利便性の向上、経済の効率化、現金管理コストの削減を目的として、世界各国で積極的に進められているキャッシュレス決済。

日本政府は、キャッシュレス決済の普及を経済成長戦略の一環として位置づけ、2025年までにキャッシュレス決済比率を約40%に引き上げる目標を掲げ、将来的には世界最高水準の80%を目指しているということです。

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